有田芳生氏「統一教会は毎月1億円の『対策費』で『政治の力』に頼った」

公開日: 更新日:

有田芳生(ジャーナリスト/前参議院議員)

 統一教会(現・世界平和統一家庭連合)をめぐり、一体どんな「政治の力」が働いたのか──。教団の実態を暴き、社会問題化の端緒を開いたジャーナリストの発言に各方面で衝撃が走っている。統一教会との距離を見誤り、凶弾に倒れた安倍元首相の負の遺産は「内閣の最重要課題」だったはずの北朝鮮拉致問題もまたしかりだ。統一教会、そして拉致問題。この間、何が起きていたのか。渦中の人に改めて聞いた。

 ◇  ◇  ◇

 ──教団をめぐる約30年前の刑事摘発の動きについて、「政治の力」が阻止したという趣旨の発言をされました。1980~90年代の社会問題化、オウム真理教に対する95年の宗教法人解散命令、96年の改正宗教法人法施行、2007~10年に相次いだ霊感商法摘発。いくつか波がありながら、教団は事実上、野放しにされてきた。なぜ追い詰められなかったのでしょうか。

 順を追って説明すると、95年3月にオウムが地下鉄サリン事件を引き起こしたことなどで、当時の警察庁最高幹部や警視庁公安部幹部と情報交換する関係ができました。間もなく教祖・麻原彰晃が逮捕・起訴され、局面は捜査から公判へと移った。そうした中、警視庁幹部から「統一教会についてレクチャーしてほしい」と呼ばれたのです。「集まっている人間がどこの誰かは聞かないでほしい」との条件付きで。霊感商法から赤報隊事件まで1時間ほど話した後、幹部ら3人で食事をした。「今日の集まりは何だったんですか」と聞くと「オウムの次は統一教会を摘発する予定だ」と。「何から入るんですか」と重ねると、「経済問題だ」と返ってきた。

 ──いまだ続く霊感商法も大問題ですが、70年代には教団幹部が正規手続きを経ず、数億円の小切手を韓国に持ち出した神戸事件(証拠不十分により無罪)がありました。

 入り口は霊感商法なのか、海外送金なのか。そこはハッキリしなかったけれども、カネの問題から入るとは言っていましたね。

■「有田さんには税金かけたなあ」と

 ──しかし、当局に表立った動きはありませんでした。文化庁は統一教会に対する解散請求を議論したものの、断念。一方の教団は97年以降、名称変更を求め続け、第2次安倍政権下の15年に認証されました。

 05年に警視庁の幹部らと居酒屋で飲む機会があった。「10年経った今だからこそ話せることを教えてください」と言うと、最初に返ってきたのは「有田さんには税金かけたなあ」と。

 ──どういうことですか?

 当時、テレビ出演した僕の発言を公安部がチェックし、危ういことを言ったと判断すると、尾行をつけていたと言うんです。朝から晩まで、僕が帰宅するまで。1日延べ50人態勢だったと。全然気づかなかった。たまに行きつけの居酒屋に顔を出したこともあった。「そういう時はどうしてたんですか?」と聞くと、「近くにいたよ」って。

 ──それだけ教団の動きを警戒していたんですね。

 ただ、肝心なところは語らず、「政治の力ですよ」と言われた。要するに、政治家から圧力を受けて統一教会本体の摘発はやめたと。ですが、公安部は重点対象を絞り込み、リスト化していた。幹部の名前や住所のほか、運転免許証や前科の有無、活動歴など幅広く調べ上げていた。統一教会は間違いなくターゲットだった。推測にはなりますが、警察官僚出身の有力議員が動いたからコトが起きなかったのか。

■「空白の30年」が安倍元首相の銃撃につながった

 ──刑事裁判で教団の組織的犯行が認定された09年の新世事件(特定商取引法違反)では横やりが入り、松濤本部は家宅捜索を免れたとされます。

「いよいよ来たか」と思ったんですけどね。宗教法人格の認証が取り消されて当然なのですから、統一教会が「政治の力」に頼ったとしか考えられない。統一教会の内部文書のひとつに、毎月の海外送金や国内経費を項目ごとにまとめたものがある。07年は「PRチーム」に毎月500万円。国会議員に対するロビー活動向け予算です。それに対し、「対策」は毎月およそ1億円。警察に影響力を持つ国会議員に対するロビー活動と裁判に向けた経費です。07年1月9000万円、2月1億円、3月1億円、4月1億円、5月8000万円……。

 ──摘発が加速していた時期ですね。

 松濤本部、つまり統一教会本体に捜査の手が迫らないよう手を打っていたということ。統一教会関連の報道があふれたのが92~93年。95年のサリン事件発生で「カルト=オウム」の図式が出来上がり、統一教会への関心が薄れ、僕が言うところの「空白の30年」が生まれてしまった。この間、ノーマークだった統一教会は政治家にさらに接近、浸透。霊感商法も献金集めも続けていた。政治やメディアが統一教会をチェックしてこなかったツケが銃撃事件という形で噴き出してしまった。オウム事件もそうですが、銃撃は日本の歴史に刻まれる事件。統一教会はこれまでにない最大の危機に直面している。かなり動揺していると聞きます。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のライフ記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    再注目の2世タレントSUMIREのハンパない存在感! 父は浅野忠信、母はCHARA

    再注目の2世タレントSUMIREのハンパない存在感! 父は浅野忠信、母はCHARA

  2. 2
    18歳のロシア人女性がインスタ使用で初の逮捕者に…「過激派」扱いで実刑6年の可能性

    18歳のロシア人女性がインスタ使用で初の逮捕者に…「過激派」扱いで実刑6年の可能性

  3. 3
    橋本環奈&坂本勇人が熱愛か 一途な“巨人愛”と意外な接点

    橋本環奈&坂本勇人が熱愛か 一途な“巨人愛”と意外な接点

  4. 4
    花巻東・佐々木麟太郎「高校通算90号」達成も…スカウトが投手と三塁守備を見たがるワケ

    花巻東・佐々木麟太郎「高校通算90号」達成も…スカウトが投手と三塁守備を見たがるワケ

  5. 5
    国葬で友人代表の弔辞 菅前首相に注目《赤塚不二夫さんの時のタモリさんを思い出す》の声

    国葬で友人代表の弔辞 菅前首相に注目《赤塚不二夫さんの時のタモリさんを思い出す》の声

  1. 6
    巨人・坂本勇人“けつあな確定”トレンド入りに…AV男優しみけんが「すごく悔しい」と激白

    巨人・坂本勇人“けつあな確定”トレンド入りに…AV男優しみけんが「すごく悔しい」と激白

  2. 7
    安倍氏「国葬」武道館はガラガラ危機! G7首脳参列ゼロ、“大票田”の各界代表がソッポ

    安倍氏「国葬」武道館はガラガラ危機! G7首脳参列ゼロ、“大票田”の各界代表がソッポ

  3. 8
    安倍晋三は政治家一家に生まれた平凡な人 空虚な器にジャンクな右派思想を注ぎ込まれた

    安倍晋三は政治家一家に生まれた平凡な人 空虚な器にジャンクな右派思想を注ぎ込まれた

  4. 9
    はあちゅうとの事実婚解消を発表 カリスマAV男優しみけんを直撃!【独占取材】

    はあちゅうとの事実婚解消を発表 カリスマAV男優しみけんを直撃!【独占取材】

  5. 10
    「ごぼうの党」代表の花束問題が波及…朝倉未来と山田孝之らダンマリに心配と落胆の声

    「ごぼうの党」代表の花束問題が波及…朝倉未来と山田孝之らダンマリに心配と落胆の声