TKGブームを牽引した専用醤油の誕生…若い社員にハッパ「思い切ってやったらええよ」
「吉田ふるさと村」社長 高岡裕司さん(後編)
出張餅つきで順調に売り上げを伸ばしていた島根県雲南市吉田町の「吉田ふるさと村」。商圏の中心を近隣の広島や大阪にせず、東京にしたのは理由があった。
「減農薬のおいしいお米や無添加の焼き肉のたれなど当社の加工食品は価格は高めですが、安心安全で付加価値が高い。しかし、関西、特に大阪の多くの消費者は、価格の安さを優先するようで……。一方で東京は物流コストがかかりますが、付加価値を理解してくださる消費者が多い。だから東京を中心とした関東で商品の販路を開拓しようと決めたのです」
■「おたまはん」がTKGブームを牽引
以来、高級スーパーや生協など、コンセプト重視で商品の良さを理解してくれる店を主要な取引先とした。そして、卵かけご飯(TKG)ブームを牽引した卵かけご飯専用醤油「おたまはん」の誕生へと続く。きっかけは営業マンの「卵は物価の優等生だが、何十年も価格が変わらず、養鶏農家は大変な思いをしている」という発言。「少しでも高い卵を売るには、TKGの専用調味料があったらいいのではないか」という提案がきっかけになった。
しかし、ベースの出汁醤油の味の手本がない。試行錯誤を繰り返し、鰹出汁にしてみりんを加えて甘みを足した関西人が好むタイプを作った。
「でも、東京の奥さま方に試食をしていただいてもあまり反応が良くない。なぜなら関東の人は甘い醤油を好まないのです。地域によって味の好みが違うと気づき、甘みを抑えて少し辛い味付けにしたところ評判が良かった。そこで、“甘めの関西、辛めの関東”と2種類の専用調味料を出すことにしたのです」(高岡さん)
狙いは当たって売れに売れた。地元・奥出雲の醤油蔵の木桶でじっくり熟成された醤油を使い、鹿児島県産の鰹の出汁、三河のみりんが主な素材で、化学調味料や保存料などの食品添加物は一切使用していない。おたまはんの類似品が数多く出現したが、元祖のクオリティーは高い。