荻原博子氏が解説「新年度 生活防衛のツボ」株価史上最高値でも庶民は投資をやめるべき

公開日: 更新日:

 新年度になって、幅広い商品で値上げが続く。日銀のマイナス金利解除を受けて普通預金金利が上昇するのはうれしいが、住宅ローン金利はどうなるか。生活を支える制度については、さまざまな変更がある。どうやって生活を守るか。経済ジャーナリストの荻原博子氏に聞いた。

  ◇  ◇  ◇

 帝国データバンクの調査によると、4月に値上げ予定の飲食料品は2806品目に上る。主な食品メーカー195社を対象に価格改定の動きを調べたところ、4月の値上げはハムやソーセージ、冷凍食品など「加工食品」が最多の2077品目。そのほか、「調味料」(369品目)、「酒類・飲料」(287品目)なども目立つ。

 飲食料品以外にもさまざまな商品やサービスの値上げが予想される。たとえば佐川急便やヤマト運輸の宅配料金も、4月から2~7%ほど値上げだ。ドライバーの時間外労働が上限960時間に制限されると、1人当たりの輸送量や収入が減る。その分が転嫁されるためだ。

 値上げラッシュに見舞われるが、日経平均株価は先月22日に史上初の4万1087円をつけた。その後も一進一退の攻防が続き、4万円前後で推移している。今年から始まった新NISAでは、非課税枠が拡大したことで、個人投資家が株式市場に集まったことも株価を押し上げる要因とされる。

 一方で日銀は、マイナス金利を解除。これを受けてメガバンクの普通預金金利は、0.001%から0.02%と20倍に上昇した。そんな金利上昇の動きから、経済誌には、インフレ時代到来を印象づける見出しが並ぶ。株式市場は好調でインフレ局面を踏まえると、積極的に株式投資を考えるべきなのか。荻原氏はそんなムードにクギを刺す。

「まず大前提として、日銀はまだデフレ脱却宣言をしていません。その状況で、インフレと解釈するのは間違いで、その誤った解釈を基に株式投資を、という議論は根本的におかしい。株式投資は常にリスクを伴いますから、慎重に見極めるべきです」

 そもそも好調な株式相場は、日銀と海外の機関投資家が大量に資金を投入することで成り立っている。そこに政府は新NISAのメリットをPRすることで、個人投資家も押せ押せムードにのっているわけだが、プロがシノギを削る“鉄火場”にシロウトが“参戦”するのは危険だという。その根拠のひとつが、株価が上昇し、時価総額が増えても、日本経済はよくなっていないことだ。どういうことか。

「GDPの個人消費は3期連続マイナスで、株式相場のイメージほど日本全体の景気はよくなっていないのです。年度替わりを挟んだ調整局面という見方もありますが、平均株価は4万円前後で停滞しています。史上最高値に向かったときの勢いはなく、相場は必ずしもよくない。何より、今後の世界がどうなるか、まったく予測できません。株式投資は、未来を予想するものです。この国内外の状況では、個人が手を出すべきではありません」

■11月の米大統領選が波乱の火種に

 振り返ると、米国でバイデン大統領が誕生したのは2021年1月だった。翌年2月にロシアがウクライナに侵攻したことで、世界に原材料高の嵐が巻き起こった。それが値上げの一因にもなり、いまも続いている。荻原氏が続ける。

「こうした世界情勢の流れをだれが予想できたでしょうか? できませんよね。それと同じような世界情勢の激変が、秋の米大統領選をキッカケとして起こるかもしれません。共和党の指名候補争いではトランプ氏がスーパーチューズデーを制して、バイデン氏との世論調査でも有利な情勢です。しかし、トランプ氏の元側近は米議会襲撃事件に関与したとされる極右のスティーブ・バノン氏で、娘婿のクシュナー氏はガザ地区をめぐって過激な発言をした過去があります。米大統領選の状況によっては、その先がまったく見えません。予測できないことが毎日、繰り返されているのが世界なのです」

■従業員より株主重視は東インド会社時代のまま

 平均株価は上昇した。企業の収益も改善した。ところが、この30年間、実質賃金は変わらないどころか、減っている。厚労省の「毎月勤労統計」(23年版)によると、20年の実質賃金を100とすると、23年は97.1。30年前からほぼ右肩下がりで、15.3ポイントも下落している。ここにきて大手企業だけでなく中小企業にも賃上げの動きは見られるが、どうなのか。

「企業はこれまで利益の多くを株主への配当に回し、従業員への還元は二の次でした。資本家(株主)がリスクを取って企業に出資して、利益を生んだ企業は資本家に還元する。資本主義とはそういうもので、株式会社の原点といわれる東インド会社の時代から受け継がれています。商法を改正した日本がグローバル化した以上、仕方ないことです」

 実質賃金が上がらず、生活が八方塞がりのままとなると、沸騰する株式市場に魅力を感じる人もいるだろう。やっぱり株式投資は控えるべきなのか。

「日本の人口構成は、富裕層とそれ以外に二極化してきています。投資ができるのは、資金に余裕がある富裕層で、多くの庶民は生活が大変で株式投資に回す余裕資金はないはずです。失ってもいいと思える資金で面白いと思えれば、株式投資に回すのはいいのですが、そうするとそれは投資ではなく、投機になります。そのスタンスで株式投資初心者のシニアが、今後の生活資金である退職金などを株式投資につぎ込んで失うと、取り戻すのが難しい。老後の生活に困るので、シニアの初心者はやらない方がいいです」

 若い人なら、株式投資もありだという。損失を回収できる時間があるのがひとつ。もうひとつは、少額投資でヤケドを負った経験は将来、生きる可能性もあるためだという。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 暮らしのアクセスランキング

  1. 1

    記録的な「秋の長雨」でコメ収穫できず産地悲鳴…避けられぬ新米品質低下で米価さらに下落

  2. 2

    (1)東京・杉並区を流れる善福寺川周辺にも、「アサ」「ツル」「カマ」は湿地、「エコ」は川の入江を示す水害地名

  3. 3

    これは「多死社会を先取りした街」の姿だ! 「地域全体が老人ホーム」になったドヤ街「山谷」で、オヤジさんたちがカラオケを楽しむ居酒屋に突撃してみた

  4. 4

    荻窪「銭湯GOKURAKUYA」銭湯では珍しいセルフロウリュにウキウキ

  5. 5

    「あの人、もったいなかった…」ではもう遅い! 婚活男性を次々断る“ポイポイ婚活”女性の落とし穴

  1. 6

    9月に入っても全国各地で連日“大雨ラッシュ”のナゼ…10月も台風来襲で大荒れの恐れ

  2. 7

    9月も漁獲量8割減…歴史的不漁で1匹400円のサンマに続き秋サケ・サバも全滅危機

  3. 8

    (2)「丸子「野毛」「等々力」など東京と神奈川で同じ地名 多摩川の氾濫で分断された水害の痕跡

  4. 9

    男女平等「世界117位」の日本、古代は先進国だった? 16代の天皇のうち8代が女性だった「女帝の時代」

  5. 10

    ドヤ街「山谷」の憩いの場・玉姫公園で見た異様な光景 「倒れている人がいるのが当たり前」という“異世界”を目の当たりに

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    中村メイコさん「大切なものから処分するとその先の断捨離が進む」

  2. 2

    《芸能界ってなぜ『在日』を隠すの?》…中村ゆりさんがルーツを胸に「負けん気」を貫いた44年の生涯

  3. 3

    WEST.重岡大毅の結婚にファンの怒りと落胆…“祝福されないアイドル”がやらかす「3つの誤算」

  4. 4

    元小結・常幸龍貴之さんは土俵付きレストランの店長に「序の口デビュー27連勝」の記録持つ

  5. 5

    「恫喝暴行&中絶強要」報道のソフトバンク村上泰斗(19) 素質だけなら山本由伸クラスだったのに…

  1. 6

    “女性芸能人”を斡旋? また炎上中…timelesz篠塚大輝の繰り返す失言と秀才キャラの崩壊がもたらす影響

  2. 7

    原菜乃華がWEST.重岡大毅"デキ婚"発表で「深刻なもらい事故」…ヒロイン競争は“ライバル”出口夏希が王手

  3. 8

    「ちょっと一発かまそうよ」 城島健司の発案で結果的に他球団の選手には“申し訳ないこと”をした

  4. 9

    中森明菜が完全復活 結果的に長期休養がその価値を上げたが、応えられるだけの資質を持っていた

  5. 10

    萩本欽一〈46〉斉藤清六が泣きながら持ってきた1000万円、追い返そうと思って貯金額を聞いたら驚いた