なぜ“相手の不機嫌”が自分に伝染する? 人間関係の「トゲ」を生む目に見えない原因とは

公開日: 更新日:

ぶっきらぼうな「ただいま」がトゲのある返事を呼ぶ

 やがて研究チームは驚きとともに、こう結論づけた。

 人間がバナナを取るところを見ただけで、サルの脳内で「サルが自分でバナナを取ったとき」と同じ現象が起きる。つまり、脳の画像を見るだけでは、誰がバナナを取ったかわからない。サルかもしれないし、研究者かもしれない。

 ようするに、こういうことだ。他者の動作を見ると、それが自分の動作であるかのように脳が反応する。反対に、他者がこちらの動作を見たときも、その人の脳で同じ反応が起きる。

 となれば、毎日毎日、四六時中、誰もが自分の脳で起きていることを他者に伝染うつしていることになる。これは責任重大だ。また、厄介な問題でもある。人間の行動は日々、互いに依存し合い、相手に強く影響されているのだ。自分の脳が変わってしまうことさえある。

 だからこそ、人づきあいは接し方が肝心だ。これを知れば、次のガンジーの名言が、さらに意味深く感じられるのではないだろうか。

 私たちは世界を映している鏡にすぎない。
 外の世界のあらゆる傾向は、私たちの内なる世界で見つかる。
 そして、自分を変えることができれば、世界もきっと変わる。
   ――ガンジー(インドの政治指導者)

 ちょっと想像してほしい。あなたは職場での長くストレスフルな一日を終えて、くたくたになって家に帰ってきた。そのときの「ただいま」のひと声が、そんなつもりはないのに、少しぶっきらぼうになってしまった。

 その態度は、そっくり家族に伝染する。家族もまた、少しぶっきらぼうな返事をするだろう。もしかしたら、むっとして言い返してくるかもしれない。するとあなたは、たまっていたストレスが一気に噴きだして、怒りを爆発させる。それがきっかけで、喧嘩がはじまるかもしれない。

 もちろん、誰だって疲労やストレスを抱えることはある。それでも、自分が送るシグナルや、そのシグナルが他者に与える影響は意識したほうがいい。とりわけ、疲労やストレスを抱えているときは、その場かぎりの対応ではなく、その後どうなるかを見越して対応しよう。

 ありのままの自分でいてもいいじゃないか、と思う人もいるかもしれない。もちろん、それも正しい。ただ、私たちは何も考えずに、単なる習慣からふるまっていることが多い。

 本当にそうしたくてしているのだろうか? 本当にそれがありのままの自分なのだろうか? 人から教えられたことや経験から学んだことを、ただ繰り返しているだけではないだろうか?

「ミラーニューロン」という細胞の存在を知って、自分のふるまいがまわりに伝染することや、まわりの人のふるまいも自分に伝染することがわかれば、それがいろいろと考えるきっかけになるはずだ。

▼レーナ・スコーグホルム
 行動科学の研究者。講演家、教育者。年に80回近く講演や講義を行い、スウェーデンで最も人気のある講師100人の1人に選ばれた。温かさとユーモアにあふれる語り口と、明快でわかりやすい解説には定評があり、2021年には、スウェーデンのすぐれた講演者に与えられるStora Talarpriset賞を受賞した。25年にわたり研究を続ける脳科学にもとづいた人づきあいのメソッドは、職場や私生活で今すぐ役立つツールとして、高く評価されている。本書『The Connection Code』(Bemötandekoden:konsten att förstå sig på människor och få ett bättre liv.)は、スウェーデンで発売と同時に売上ランキング上位に入り、ベストセラーとなった。国内外で話題の本となっている。

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    りくりゅうペア大逆転金メダルを呼んだ“かかあ天下” 木原龍一はリンク内外で三浦璃来を持ち上げていた

  2. 2

    「マイル修行僧」がはびこる離島への“ピストン旅”にどれだけの品位があるというのか?

  3. 3

    「悪口は聞きたくない」はどこへ? 落選の野党前職を執拗に“口撃”…高市批判はNGで野党批判はスルーの思考停止

  4. 4

    【ヤクルト】故障ラッシュで離脱13名、池山監督も球団も「若手を育てるしかない」と覚悟を決めた

  5. 5

    「超ド級国民的アイドル」の熱愛はSnow Manの宮舘涼太!「めめじゃなかった…」ファンの悲喜こもごも

  1. 6

    “言い訳番長”高市首相の呆れた支離滅裂ぶり 1000万円カタログギフト配布で「政党支部の認識」を都合よく使い分け

  2. 7

    フィギュアりくりゅうペアらに新たな試練 ロシア製“鉄の女”が目論む2030年仏アルプス五輪の大逆襲

  3. 8

    日本ハム新庄監督はガマンできるのか…岡田彰布氏が即却下した“有原航平フル稼働プラン”

  4. 9

    高市早苗「飲みィのやりィのやりまくり…」 自伝でブチまけていた“肉食”の衝撃!

  5. 10

    高市首相が強める日銀への“圧力” 狙いはやっぱり「インフレ増税」にあり