なぜ“相手の不機嫌”が自分に伝染する? 人間関係の「トゲ」を生む目に見えない原因とは

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まずはあなたの感情が肝心だ

「ただいま」の一言。あなたの声のトーンや表情は、その日一日の出来事を反映しているかもしれません。実は、この何気ない瞬間にも、人間の脳の驚くべき特性が現れているのです。

 行動科学的な視点から、人間関係における「トゲ」をなくして他者と生きる術に迫った『あいては人か 話が通じないときワニかもしれません』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けします。

  ◇  ◇  ◇

 買い物をした店のレジ係が、とても感じのいい人だった……そんな経験はないだろうか? やさしく微笑み、親しみを込めた口調で「ありがとうございました。素敵な夜をお過ごしください」などと言って、あなたを驚かせる。レジ係の笑顔はあなたに伝染うつり、あなたも微笑み返している。

 もしかしたら、これとは逆の経験をしたかもしれない。そのレジ係は、レジの前に並んだ長い列を見て、うんざりしたようにため息をつく。あなたが挨拶しても、うつむいたまま、ほとんど聞きとれない声で不機嫌そうに「いらっしゃいませ」とつぶやく。そして列に並ぶ客がどんどん増えるのを横目に、あなたが支払いを済ませるのをいらいらしながら待っている。

 このレジ係2人の対応の違いがおよぼす影響は大きい。にこやかで感じのいいレジ係の場合、あなたは元気をもらって楽しい気分になり、家に帰る足取りも軽くなるだろう。いっぽう、愛想の悪いレジ係の場合は、あなたまで不機嫌になり、きっと、むしゃくしゃしながら家路につくはずだ。

 あなたの家の近くに、スーパーマーケットが2軒あるとしよう。どちらの店も品揃えは同じで、値段も変わらない。ただし、いっぽうの店のレジ係はとても感じがよく親切で、もういっぽうのレジ係は早く家に帰りたいと思いながらレジにいる──あなたはどちらの店を選ぶだろう?

 私たちは、他人の感情にいとも簡単に「伝染」してしまう。

 別の例を挙げよう。あなたが会議に出席しているときに、出席者の1人があくびをした。こういうとき、たいていは、ほかの出席者も何人かあくびする。そして、それを見ていたあなたも、あくびがしたくなってしまう。

 あるいは映画館や劇場、講演会に行ったとしよう。ふいに観客席の誰かが咳せき込みはじめた。こんなときもあくびと同じで、たちまちほかの客も、少なくとも数人は咳をしたり咳払いしたりする。そして、あなたも、なんだか咽喉がいがらっぽくなってくる。

 いま、これを読んで、ちょっと咽喉がいがらっぽくなってきたのではないだろうか?

 私たちはなぜ、まわりで起きることにこんなにも影響されるのか? 笑顔、不機嫌な態度、あくび、咳など、あらゆるものが「伝染」するのはなぜだろう?

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