四ツ木「大衆割烹 ゑびす」で脂の乗った、てんこ盛りのしめ鯖に感激
昭和26年創業。若い飲み助たちにも人気の名店
まずは、一気に飲み干す。そこにしめ鯖登場。え! こんなにっていう量。脂が乗っていて、締め具合もちょうどいい。サイコ~。あっという間にビールを飲み干し、ボール(430円)に。しばらくチューハイをボールと呼ぶことに慣れてきた。壁一面のお品書きを見回すと、数種類ある刺し身にはそれぞれ産地が明記してあり、煮る、炊く、焼く、揚げるなど、あらゆる料理が並んでいる。なるほど、暖簾に大衆割烹と書かれていることに納得する。居酒屋や酒場は酒肴が中心だが、割烹はちゃんとした料理を出す店。ここゑびすは酒肴の値段でちゃんとした料理を出す。そこが人気のゆえん。その姿勢に頭が下がる。
ここで穴子のてんぷら(600円)を追加。するとカウンターから一斉に「お~!」という声が上がった。安青錦がまた勝ったようだ。「よし、祝杯だ! お酒、もう一本!」と、カウンターの中ほどで日本酒を飲んでいた大先輩が声を上げる。その先輩が女将さんに言う。「あと20年はここで飲みたいね」「いくつになったの?」「まだ、80!」。恐れ入りました。
ゑびすは現店主の石田さんのお父さんが昭和26年に創業。魚がうまいのは言うに及ばず、豚カツなど重量級のつまみも充実しており、若い飲み助たちにも人気の名店だ。最後にアタシが注文したのはドジョウの丸煮(600円)。熱い夏のスタミナ源として、昔はドジョウを普通に食べていた。祖母が「ちょっと夏バテだから精つけようか」って言うときには、いつもアタシが魚屋に買いに行かされたもの。子供時代にタイムスリップしていると、大きめの器にたっぷりのドジョウが登場。熱々を2、3匹、口に放り込む。ドジョウの歯応えとゴボウの風味がたまらない。そこへボールをグビリ。再びサイコ~。
ところで、帰りの四ツ木駅で、この街は「キャプテン翼」の聖地だということを初めて知った。なるほど、だからこんなディープな街なのに外国人が歩いているんだね。そりゃ「綴方教室」の聖地巡礼なわけないわな。 (藤井優)
○大衆割烹 ゑびす 葛飾区四つ木1-28-8