【緊急連載#1】「重大虐待防止」優先の死角
見えない「傷」を考慮すべき
そのため、児相の現場では「安全が完全に確認できるまでは慎重に」という基本方針が構築され、家庭復帰のハードルは高くなる。家族円満に向けた支援より、リスク回避が優先される。児相と親との信頼関係が崩れやすい点がここだ。子どもを一時保護、分離されると、少なくない親が「突然子どもを奪われた」「悪者扱いされた」「児相に全く話を聞いてもらえない」と感じる。児相への不信感は強まり、支援関係は壊れやすくなる。
最近では子どもの前での夫婦間での暴力や罵声、威嚇や威圧、さらに精神的支配までもが子どもに対する虐待リスクとして扱われる傾向にある。「親が子どもを直接殴っていない」ケースでも、家庭環境を危惧して分離判断になることがある。トラブルとなった家族からは「必要以上に親子を分離している」「親子の対話より保護を先行されてしまう」との不満を訴えるケースが多い。
児相が抱える事案が多すぎるため、職員不足により、家族に対するきめ細かな対応ができていないこと。個々のトラブルの判断基準にばらつきがあること。さらに親に対する児相側の説明不足などが背景にある。
今回の場合、阿部前監督はパワハラ気質とされるものの、家庭内のトラブルを「保護」一辺倒で取り組むことへの死角が浮き彫りになったともいえる。代理人が明らかにした長女の手紙から、父親をかばおうとしていることや、大きく報道されたことへの動揺、自責の念が読み取れる。特に〈父が警察に連行される姿をみて、私は目前で泣き崩れてしまいました〉という表現からは、児相に相談するだけのつもりが、「巨人軍監督」という名誉ある地位を父親から奪ってしまった「心の傷」がうかがえる。
児相は長女を守っているようで実際には守っていなかったともいえる。児相は何より、その心に深く刻まれた、見えない「傷」を考慮すべきであろう。(つづく) =日刊ゲンダイ取材班
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