実質賃金や消費者心理は延期時より悪化でも“増税強行”の愚
来月1日の消費税率10%への引き上げが近づく中、厳しい経済環境を示す統計結果の発表が相次いでいる。安倍首相は過去2回、2015年10月と17年4月に予定されていた消費増税を延期しているが、増税予定月1年前の数値を比べてみると(別表)、現下の状況は延期時よりメタメタであることがよく分かる。
厚労省の最新の「毎月勤労統計」(7月速報値)によれば、賃金の伸びに物価の変動を反映した実質賃金は前年同月比0・9%減で7カ月連続のマイナスだった。一方、1回目の延期時は、5カ月前(15年5月)に25カ月ぶりにマイナスを脱していた。いったん4カ月前(15年6月)に、賞与支給時期が前年に比べずれた特殊要因でマイナスになったものの、その後、プラスに転じていた。2度目の延期時もプラスの数値が並んでいる。
内閣府の最新(8月)の「消費動向調査」はもっとひどい。消費者心理の明るさを示す消費者態度指数(2人以上の世帯、季節調整値)は、前月比0・7ポイント低下の37・1で、ナント11カ月連続の悪化だった。消費者心理は、1年前から坂道を下り続けているのだ。一方、2度の延期前は、改善や悪化を繰り返し、今のように右肩下がりではない。