劇作家・平田オリザ氏「異議唱えなければファシズム広がる」

公開日: 更新日:

歴代自民党政権には自制心があった

 元経産官僚・古賀茂明氏の「報道ステーション」降板劇は、安倍政権のメディアに対する「圧力」の存在を視聴者にもまざまざと知らしめることとなった。「誰かが異議を唱えなければファシズムが広がってしまう」――。世界的に著名なこの劇作家の平田オリザ氏(52)も、こうした危機感を抱くひとりだ。「翼賛体制」に向かいかねない日本の現状を、文化的な視点と俯瞰的な目線で鋭く突いてくれた。

――「翼賛体制」に強い危機感を持たれたのは、何か契機があるんですか?

 大阪(阪大教授)にいて、そういう雰囲気を実感したことが大きいですね。橋下さんが首長になる2年前くらいに赴任して、府や市の職員のみなさんと「いろんな文化政策をやりましょうね」と言っていたんです。それが橋下府政になったら、職員がみな沈黙してしまった。マスコミもそうです。記者会見で恫喝が行われて、記者たちが本当に萎縮しちゃった。普通だったら橋下さんの発言はパワハラでしょう。そういうことを目の当たりにして、「ああ、ファシズムというのは、こういうふうに広がっていくんだな」と思ったんです。

――大阪でファシズムの萌芽を体感されたのですね。

 厳密に言うと、ファシズムというのは、よっぽどの偶然がない限り、広がらないんです。大抵がその前でついえて、民主主義が勝つ。でも、たまにいろんな偶然が重なると、ゴワーッと広がっていくので、そうなる前に異議申し立てをしておかないといけない。もっとも逆に言うと、大抵が大丈夫だから、頭のいい人はあまり異議を唱えない。万が一、ファシズムが広がってしまったら、異議を申し立てていた人が一番最初に(攻撃の)ターゲットにされるし、広がらなければそれでおしまい。異議を唱えるのは、どっちにしても損な役回りです。ただ「俺は言わなくても誰かが言ってくれるだろう」というのが重なった時にファシズムが成立するので、言える立場の人間が言おうということ。特に安倍政権は維新より巧妙なので、早い段階で異議申し立てをしておかないと、どんどん言いにくくなる。

■国民を「煽る」のは非情に危険な行為

――安倍政権の方が巧妙というのは?

 橋下さんはわかりやすかったんです。「アンチ東京」をテコにして、東京では放送しないテレビ番組とかで東京の悪口を言う。要するに「タイガースは優勝しなくてもいいから巨人にだけ勝てばいい」みたいな大阪人の心理をうまく利用したところがあるんです。だから国政に出た途端、一気に力を失った。「アンチ東京」の論理が通用しなくなって、外に敵をつくろうとして、慰安婦発言で失敗した。ファシズムというのは、常に外敵をつくらなければ成立しないという構造があるから、永久に続けるのは無理なんです。安倍政権にとって外敵は中国や韓国。両国との関係をここまで悪化させたことは、どこまで意図的だったのかはわかりません。しかし、それが今の高い支持率の背景になっていることは間違いありません。

――鳩山政権で施政方針演説の原稿を書くスピーチライターをしていらっしゃいました。今年の安倍首相の施政方針に「列強を目指す」という趣旨の発言がありましたが、仰々しい物言いで、愛国心を煽るというか、驚きました。

 対中、対韓政策と同じで、国民を「煽る」のは非常に危険な行為です。これまで歴代の自民党政権は、ある種の自制心を保ってきたわけですよね。一線を越えてしまうと、たぶん本人たちも制御できないような危険な領域に行ってしまう。安倍さんたちはただ政権維持が目的で、そこまでの意図はないのかもしれません。しかし、最終的にファシズムを推し進めるのは国民の熱狂です。それが一番危険なんです。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新の政治・社会記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    次女・石橋静河強し!ドラマ界席巻する“石橋ファミリー”が乗り越えた「21年前の隠し子騒動」

    次女・石橋静河強し!ドラマ界席巻する“石橋ファミリー”が乗り越えた「21年前の隠し子騒動」

  2. 2
    キムタクと交際の噂があった“かおりん”直撃 9年近い交際

    キムタクと交際の噂があった“かおりん”直撃 9年近い交際

  3. 3
    「自分だけのために使う時間」を増やすコツ

    「自分だけのために使う時間」を増やすコツ

  4. 4
    小林麻耶の告白は99%真実 この目で見た妹・麻央さんの哀しき晩年と市川海老蔵の夜遊び

    小林麻耶の告白は99%真実 この目で見た妹・麻央さんの哀しき晩年と市川海老蔵の夜遊び

  5. 5
    部下の女性に睡眠薬飲ませ…自宅タワマンに連れ込み凌辱繰り返した悪徳美容外科医の卑劣

    部下の女性に睡眠薬飲ませ…自宅タワマンに連れ込み凌辱繰り返した悪徳美容外科医の卑劣

  1. 6
    7.10参院選は岸田自民に逆風…情勢一変で気になる「あの有名比例候補」の当落予想

    7.10参院選は岸田自民に逆風…情勢一変で気になる「あの有名比例候補」の当落予想

  2. 7
    山陽電鉄内で全裸盗撮事件 女性車掌が同僚男のクズ依頼を「断れなかった」切ない理由

    山陽電鉄内で全裸盗撮事件 女性車掌が同僚男のクズ依頼を「断れなかった」切ない理由

  3. 8
    出所後カジノで9億円を失い…大王製紙元会長・井川意高氏が明かす「バカラED」

    出所後カジノで9億円を失い…大王製紙元会長・井川意高氏が明かす「バカラED」

  4. 9
    山﨑賢人に広瀬すずとの“半同棲”報道 「焼き肉デート」の土屋太鳳とはどうなった?

    山﨑賢人に広瀬すずとの“半同棲”報道 「焼き肉デート」の土屋太鳳とはどうなった?

  5. 10
    ヤクルト村上に打撃成績ブッちぎられ…巨人岡本が「年俸&メジャー挑戦」でも逆転される日

    ヤクルト村上に打撃成績ブッちぎられ…巨人岡本が「年俸&メジャー挑戦」でも逆転される日