古谷経衡さんが憂う有権者の劣化 日本の知性の底が抜けた

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 先月の参院選で「NHKをぶっ壊す!」のワンイシューを掲げる「NHKから国民を守る党」(N国)が1議席獲得した理由を「日本人の知性の劣化」と喝破するのが、元“ネット右翼”で文筆家の古谷経衡さん(36歳)だ。自らがネトウヨから離れたワケ、そして今の時代に「極論」が支持される背景などについて歯に衣着せぬ言葉で鋭く語った。

■「面白いからいいじゃん」で投票する“政治的非常識”層が増えた

 ――参院選の一番の驚きは、N国が98万票を獲得し、1議席獲得したことでした。

 N国が98万票取った時、同党首の立花孝志さんの知名度からして、数が合わないと直感的に思いました。10年近く前から立花さんを知っていますが、今はユーチューバーをやられていますね。コアなファンが5万人、最大で10万人いたらいい方でしょうが、約100万票も取っているわけですよ。

 ――その現状をどう分析していますか。

 朝日新聞の出口調査によると、N国に票を入れた人のうち安倍政権下での憲法改正に「賛成」が54%、「反対」が44%でした。ネット右翼、いわゆるネトウヨは安倍政権下での憲法改正に反対とは絶対に言いません。ということは、N国に票を入れた人のほぼ半分はネトウヨでもなければ、保守でもない。NHKに不満のある人もいるでしょうが、それでも数が合わない。残りは、N国の政見放送がユーチューブに流れて、「何これ。面白いね」って思って投票しただけのユーチューバー層なんですよ。

 ――ネット動画が投票行動に影響していると。

 立花さんは政見放送で「路上カーセックス」を連呼していましたが、政治的常識のある人は、そういう政見放送を見ても笑って受け流して、他の政党に入れる。ところが、「面白いからいいじゃん」という動機で投票する“政治的非常識”の有権者がここ3、4年で増えたんですよ。この国の知性の底が抜けてしまった印象です。

 ――国会議員の中にも“政治的非常識”の人が見受けられます。

 戦争やってもいいんだとか、人権なんて要らないんだとか、そういうことを言う議員がいますが、20年前だったら即刻アウトでした。北方領土へのビザなし交流の時に「戦争発言」をした丸山穂高衆院議員については、憲政史上初めて糾弾決議が出ましたが、いまだに議員の座に居座っているわけですよね。国会議員には憲法順守義務があるにもかかわらず、明らかに平和憲法の理念を踏みにじっている。「有権者の劣化=政治家の劣化」ですね。どちらか一方が劣化したのではなく、両方劣化しています。

 ――原因は何でしょうか。

 新聞や雑誌、本も読まずに、ネット動画ばかり見ているからでしょう。今の若者は漫画も読まない。「コマをどう追うのか分からないから、読めない」と言うらしいです。じゃあ何をやっているかというと、ユーチューブ。せいぜい長くて数十分の動画を見て、世の中のことが分かった気になっている。映画でもアニメでもどんどん短くなってますね。この間TSUTAYAに行ったら、90分以下で見られる映画コーナーがあってビックリしました。長時間座って何かを見るという集中力がなくなっているのです。

 ――ネット右翼、いわゆるネトウヨは「ネットが真実」だと思っています。

 インターネットが不自由だった時代を知らないからです。今の30歳過ぎから40代後半は、インターネットがナローバンドで画像1枚を読みこむのも大変だったことを知っています。動画を見るなんてとんでもないことでした。当時出てきたネット掲示板「2ちゃんねる」は、書いてあることの99%がウソ、0.5%が中立、0.5%が本当だと分かった上で楽しむのが当たり前でした。ところが、今のネトウヨの主流である50代、60代ってそういう経験をしていないですよね。子供や孫が家に光ファイバーを導入したことで、超高画質の動画の世界が広がっていることをいきなり知って、「大新聞が伝えない真実」なるものが広がっているんだと勘違いしちゃうのです。

 ――ネット上には中国や韓国に対するヘイトがあふれています。

 昔は、ネット上で他人を誹謗中傷したら、すぐプロバイダーに通報されて退会処分でした。インターネット規制が現在議論されていますが、1990年代のインターネット黎明期、ナローバンド時代の方が規制は厳しかった。今の30代、40代の前後の世代、つまり10代、20代の若者と50代以上のネットリテラシーが低くなっています。タチが悪いのは、ネットリテラシーが低いのに、「右」に引き込まれる高齢者。とんでもない差別発言も普通に言いますからね。

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