斎藤幸平氏が警鐘 カリスマ政治とヒーロー待望論の危険性
経済的な格差の拡大が人々を不安に駆り立て、極右ポピュリズムが台頭。その一方では気候変動デモや香港の民主化デモなど、大規模な市民運動も各国で盛んになり、混沌とした時代を迎えている。日本でも「れいわ新選組」などの新しい動きが顕著だ。今後、社会はどう変わっていくのか。編著「未来への大分岐」がベストセラーとなり、注目を集める経済思想家の斎藤幸平氏に聞いた。
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――2020年は米大統領選、日本でも解散・総選挙があるのではないかといわれていて、政治の世界が一気に変わる可能性を秘めた一年ですが、政治への失望も深まってます。
議会制民主主義が機能しなくなっているのが現状です。米国のトランプ大統領は「移民の犯罪が多い」「気候変動問題は存在しない」など、事実と異なることを言い立てて支持を集めている。日本も似たようなもので、SNSのせいで「見たいものしか見ない」人々が増え、気に入らないニュースは「フェイク」扱いしてスルーする「ポスト真実」と呼ばれる時代になっています。人々が、それぞれ違う「現実」を信じている状態では、議論が成り立たず民主主義は機能しません。
――嘘で真実を壊そうとするリーダーの跋扈も目立ちますが。
例えば、トランプの支持率が下がらない理由は、「偉大なアメリカをもう一度」という彼の呼びかけが、つらい現実を否認してくれるからです。日本で安倍政権を強く支持しているのも、高度経済成長期やバブル時代を覚えている中高年の男性です。日本が輝いていた時代への郷愁と、今の生活を失うかもしれないという「恐れ」が、反中・嫌韓の排外主義を生んでいる。自分だけがよければいいというエゴが長期政権を支えています。