小林節×藤木幸夫 資本主義の末期「カジノ成長戦略」は詐欺
政府が進めるカジノを含む統合型リゾート(IR)事業は、現職国会議員に逮捕者が出るなど裏で蠢く利権の存在があらわになった。経済成長の牽引役といううたい文句や依存症対策も怪しい。このままカジノを本当に解禁していいのか――。横浜市の誘致に反対姿勢を見せる重鎮2人、港湾関係を束ねる「ハマのドン」と住民運動の共同代表を務める「憲法学者」によるスペシャル対談。
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小林 秋元司衆院議員の事件は典型的な土木利権。先日、横浜市の商工会議所がバックアップした「カジノ展」を見たのですが、「我々が1兆円を投資しますから、日本は潤いますよ。いい話でしょう」と言って、何社もが競争入札するわけですよ。できるだけ当局の支援を得て、落札したい。つきましてはお礼します……。毎度のパターンの話じゃないですか。
藤木 資本主義の末期症状ですね。ソ連の初代指導者・レーニンがこう言っているんです。資本主義というのは汗をかいて、お金を儲けて、心を豊かにし、生活を楽にする。しかし、あるところまで行くと、汗をかかないで、舌先三寸でもお金が儲かるということに気づき、それを始める。そうして人を騙してお金を稼ぐようになる。そういう時代が来るから見てなさいと。その通りになっていますよ。内閣の言う「成長戦略」も詐欺の成長路線で、国民生活のためのものではありませんね。
小林 金融資本主義あたりから、世界は口先経済になった。マネーゲームをして、働かずにコンピューターを使って金を稼いでいます。アベノミクスだって株価が上昇しただけの話。統計上の結論として、庶民の可処分所得は減っています。国家的詐欺ですよね。詐欺とは騙して金を巻き上げること。カジノもそうです。
藤木 まさしくその通り。山本周五郎の小説に出てくるような江戸時代の人情長屋には、大家さんがいて、店子がいて、そそっかしいのや怠け者、働き者がいた。落語や講談におなじみのパターンがありますが、私はあれが日本の市民生活の原型だと思います。「家賃を払わないから出ていけ」なんて大家さんは言わない。旦那が怠け者でもおかみさんが働き者だったりしてね。いろいろバランスとって長屋はできている。ところが今の日本は、弱いやつを切れでしょ。日産のようにゴーンを呼んできて、大金を払ってでも工場を閉める。そういう資本主義が当たり前になってしまった。
小林 「首切り屋」というビジネスすらあります。
藤木 でも、港にはそれがないんです。横浜港には約250の港運関係の会社がありますが、港運会長の私がそれをさせない。「俺たちは護送船団だ」と。1隻の船が遅れたら皆が止まって助けるんだ。護送船団方式がダメだって言った人がいましたね。竹中平蔵さん。成長のためには邪魔なものは捨てていかなきゃいけないって、おかしな時代です。米国が言わせているのか。カジノもいみじくも同じですね。