鈴木明子
著者のコラム一覧
鈴木明子プロスケーター、振付師

 1985年3月28日、愛知県生まれ。6歳からスケートをはじめ、15歳で全日本選手権4位。東北福祉大に進学後、一時、摂食障害を患い休養。04年に復帰。10年バンクーバー五輪初出場。13年全日本選手権初優勝。14年ソチ五輪出場。14年3月の世界選手権を最後に現役引退。以後はプロスケーターとして活躍。15年には本郷理華のショートプラグラムで振付師としてデビューした。

<第20回>クシで髪をといたら大量に毛が抜け落ちた

公開日: 更新日:

 クシで髪をとくだけで、大量の毛髪が床に抜け落ちる。鏡でその姿を見るとショックで言葉すら出ませんでした。
 いつしか悲観的な気持ちばかりが募るようになり、ひとりアパートにこもりがちに。そんな私を救ってくださったのが、本郷則子さん(64)。私が後に「仙台の母」と呼ぶようになる恩人です。

 美容師の本郷さんは、現在、名古屋のリンク(邦和スポーツランド)でコーチを務める本郷裕子さん(東北福祉大スケート部OG)の母親です。今年のグランプリシリーズでシニアデビューを果たす女子フィギュアの本郷理華ちゃん(18)の祖母でもあります。

 大学スケート部の関係者の紹介で知り合ったのですが、初対面の時から本郷さんはおおらかで、笑顔が絶えない人でした。そんな性格に引かれ、私は40歳以上も年上の女性と意気投合。以来、母親のように慕うようになったのです。

「行動派」の本郷さんは拒食症で出無精になっていた私を積極的に外に誘ってくれました。

 スケートが滑れない寂しさを理解していたのか、あえてフィギュアの話はしませんでした。その代わりに19歳の私の手を取り、仙台のネオン街にも誘い出してくれました。当時はお酒も飲めず、食事も限られたものしか口にできません。でも、煌々とした夜の街を散策したり、雑談するだけで自然と気は紛れます。夜の街に出たことがなかった私は少しだけ大人になった気分を味わうことができました。

 本郷さんのこうした気遣いもあって、本来「長期治療」が必要な拒食症も、少しずつ改善。早期回復の道が開けてきました。(つづく)

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