大谷翔平が球宴リアル二刀流出場で勝ち投手! 見据えるは「今季60本塁打」とMVP
試合前のセレモニーで名前を読み上げられると、クアーズフィールド(コロラド州デンバー)は一層、大きな歓声に包まれた。
エンゼルス・大谷翔平(27)が日本時間14日のオールスターに「1番・DH」に加え、特別ルールで先発投手も務める史上初のリアル二刀流で出場。打者では2打数無安打だったものの、先発投手として1回のマウンドへ上がると先頭タティスJr.を左飛、2番マンシーは二ゴロに抑え、3番アレナドには161キロを計測するなど、160キロ超えを連発し、最後はスプリットで遊ゴロに、三者凡退に抑えた。
試合はア・リーグがナ・リーグに5-2で勝利。大谷は球宴史上初の二刀流出場で、勝ち投手となった。
■メジャートップの33本塁打で前半戦折り返し
開幕から投打の二刀流をこなし、投手では13試合で4勝1敗、防御率3.49、87奪三振。打者では84試合で301打数84安打の打率.279、33本塁打、70打点。本塁打はブルージェイズのゲレーロJr内野手らに5本差をつけてメジャー単独トップ、打点は同3位で2冠を狙える位置につけて前半戦を折り返した。本塁打はシーズン62発ペースで「大台」にも届きそうな勢いである。
メジャーでもシーズン60本塁打はわずか5人
メジャーの長い歴史の中でも、シーズン60本塁打を放ったのは、1927年のベーブ・ルース(ヤンキース=60本)、61年のロジャー・マリス(同=61本)らわずか5人だけ。ここ四半世紀に限れば、90年代終盤から本塁打王争いを演じたサミー・ソーサ(カブス)、マーク・マグワイア(カージナルス)、2001年にシーズン最多本塁打記録(73本)を更新したバリー・ボンズ(ジャイアンツ)の3選手が有名だ。いずれもメジャーの歴史に名を残した選手ばかりだが、ソーサらはドーピング全盛の時代に筋肉増強剤を用いて飛距離を伸ばした、いわば上げ底の数字だ。ソーサにいたってはさらに悪質で、03年6月に反発力を増すためコルクバットを使用していたことが発覚した。
これら不正に手を染めて結果を残した長距離砲とは異なり、大谷は禁止薬物に手を出したり、違法バットの使用とはもちろん無縁。それに加え、今季から大リーグ機構(MLB)の方針で激増した本塁打数を抑制するため、低反発球を使用しており、大谷はビハインドの中で本塁打を量産しているのだ。
「米国のメディアや野球ファンの間で大谷の価値はボンズやマグワイア以上と認識されています」とスポーツライターの友成那智氏がこう続ける。
「ボンズらが60本塁打以上を記録したといっても、米国ではインチキによるものとの認識が定着しており、記録はあくまでも参考扱いとされています。偉業を成し遂げながら、誰一人として米国野球殿堂入りを果たしていないのが何よりの証拠です。米国では真のシーズン最多本塁打記録はマリスの61本というのが共通認識。米国で大谷フィーバーが沸き起こっているのも、不正とは無縁の日本人打者によるマリスの記録更新への期待の表れとも言えます。投打の二刀流をこなしていることもあり、仮に大谷が今季、60本塁打を達成できなくても故障による離脱さえなければMVPは確実だと思います」
メジャーでは本塁打を量産する選手に対して徹底した薬物検査を課す傾向にある。10年(54本)、11年(43本)と2年連続本塁打王のバティスタ(ブルージェイズ)は09年の13本塁打から激増したため、2年間で20回以上、尿や血液を採取されたという。
今季の大谷は自己最長飛距離となる143メートルを記録するなど、打球速度とともにケタ違いのパワーで周囲の度肝を抜いている。前日の本塁打競争では史上4位タイとなる156.4メートル弾を放った。バティスタ同様、MLBのドーピング検査官から徹底マークされているのは想像に難くないが、もちろんシロだ。
昨オフは昨季のサイ・ヤング賞右腕バウアー(ドジャース)ら多くのメジャーリーガーが利用するトレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」で筋力アップを図った。
「同施設ではトレーニングに加え、定期的に血液を採取して疲労度を測ったり、野球で重視される股関節など、投球や打撃に必要な体の各部位の効果的な使い方をマスターした。故障防止に加え、科学的なアプローチも導入したことが今季のパフォーマンスにつながっています」(米放送関係者)
大谷フィーバーはまだまだ続きそうだ。