著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

NCAAの新方針「大学生選手への給与支払い」はなぜ、大リーグにとってマイナスなのか

公開日: 更新日:

■競技間格差の拡大

 一方でNCAA会長のチャーリー・ベイカーは、大多数の選手がパブリシティー権を行使できず、人気の高い競技や特定の有力選手との格差が拡大することを懸念している。

 確かに、現在でもアメリカンフットボールバスケットボールのように人気が高く、奨学金も充実している競技は学生にとっても好ましい競技である。

 しかし、人気の高くない種目や最下位であるディビジョンⅢでは、選手がパブリシティー権の行使の問題などとかかわりがないのも事実だ。

 野球も人気種目ながら奨学金の質や量、注目度はアメリカンフットボールやバスケットボールに劣る。

 今後、選手によるパブリシティー権の行使が普及し、注目度の高い競技に金銭的な恩恵を与えることが常態化すればどうなるか。優れた選手ほどその能力の対価をより多く得られる競技を選び、大学スポーツにおける野球の存在感の低下が加速しかねない。あるいは大学側がより多くの利益を得られる競技の偏重が起きかねない。

 結果的に大リーグに進む選手が少なくなれば、NCAAの判断は実は球界の空洞化を招きかねないものだということが分かる。

 今回のNCAAの措置が球界に与える影響は、長期的に見れば小さくないのである。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    ドジャース佐々木朗希「今季構想外」特別待遇剥奪でアリゾナ送還へ…かばい続けてきたロバーツ監督まで首捻る

  4. 4

    中日・中田翔がいよいよ崖っぷち…西武から“問題児”佐藤龍世を素行リスク覚悟で獲得の波紋

  5. 5

    西武は“緩い”から強い? 相内3度目「対外試合禁止」の裏側

  1. 6

    「1食228円」に国民激怒!自民・森山幹事長が言い放った一律2万円バラマキの“トンデモ根拠”

  2. 7

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  3. 8

    辞意固めたか、国民民主党・玉木代表…山尾志桜里vs伊藤孝恵“女の戦い”にウンザリ?

  4. 9

    STARTO社の新社長に名前があがった「元フジテレビ専務」の評判…一方で「キムタク社長」待望論も

  5. 10

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは