近鉄・栗橋茂さんはスナック経営「球団に内緒で現役時代から。立派なことに36年目」

公開日: 更新日:

栗橋茂さん(元近鉄バファローズの主砲/73歳)

 猛牛軍団の2度のリーグ優勝に貢献した栗橋茂さんは、長く不動の4番打者として“いてまえ打線”を牽引した。近鉄一筋16年。通算1550試合に出場し、打率2割7分8厘、215本塁打、701打点。筋骨隆々の肉体から「和製ヘラクレス」の異名を取り、グラウンド外では底なしの酒豪としても知られた。そんな栗橋さんの今を追った。

  ◇  ◇  ◇

 やはりと言うべきか。選手時代は酒の武勇伝に事欠かなかった栗橋さんは、バットをマドラーに持ち替えていた。近鉄の本拠地だった藤井寺球場跡地からもほど近い駅前商店街。その一角にスナック「しゃむすん」はあった。

「別に酒飲みだから水商売を始めたわけじゃないよ。そりゃあ現役時代はけっこう飲んだけど、そもそも酒は好きで飲んでたんじゃない。することがなかったから。早くから寝るわけにもいかないし、じゃあどこ行くかとなると飲み屋になる。当時はスナック経営というものに興味があった。それだけのことよ」

 店のオープンは、仰木彬監督率いる近鉄が優勝をかけてロッテとのダブルヘッダーを戦った伝説の1988年10.19の直後。えっ!? 栗橋さんはまだ現役ではないか。

「内緒でね。当時は副業なんて禁止。特に水商売なんてもってのほか。奥さんがスナックをしてることがバレたコーチなんか、店をやめさせられるほど厳しかった。ましてや現役の選手でしょ。だから知らんぷりして、ある人に店を任せたんだけど、球団は知ってたと思うね。店名は南アジアの国あたりで『太陽』の意味があるらしい。名付けたその人が言うてた」

 栗橋さんは翌89年に引退。近鉄とは別の球団からコーチ就任の誘いをもらったが、88年オフに阪神から申し込まれたトレードを拒否するほど、栗橋さんにはいてまえ一筋の猛牛愛があった。だから誘いを断り、10席ほどのカウンターの中へ入る道を選んだ。

「やり始めの頃は『いらっしゃいませ』『ありがとうございました』が言えなくてね。きのうまでプロ野球選手だったから、人に頭を下げることができないんですよ。それに最初は客とけんかばかりしてた。だって随分とエラそうなことを言ってくるんだよ。酒が入るとコロッと態度が変わり、横柄な口のきき方になる。あまりに許せんもんだから、一度若い客に『コラッ。正座あぁぁ!』と怒鳴りつけてやった。そいつ、真っ青になって立ち上がり、ビシッと気をつけをしとったわ」

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が楽天・辰己涼介の国内FA争奪戦に参戦へ…年齢、実績的にもお買い得

  2. 2

    号泣の渋野日向子に「スイングより、歩き方から見直せ!」スポーツサイエンスの第一人者が指摘

  3. 3

    囁かれていた「Aぇ!group」は「ヤベぇ!group」の悪評判…草間リチャード敬太が公然わいせつ容疑で逮捕の衝撃

  4. 4

    西武・今井達也「今オフは何が何でもメジャーへ」…シーズン中からダダ洩れていた本音

  5. 5

    ソフトB風間球打にはイップス疑惑…昨季のプロ野球“女性スキャンダル三羽ガラス”の現在地

  1. 6

    高市総裁は就任早々から人事で大混乱…女性応援団たちに“麻市内閣”ポストの目はあるのか?

  2. 7

    一発退場のAぇ!group福本大晴コンプラ違反に「複数人関与」疑惑報道…旧ジャニ“インテリ”枠に敬遠の風向き

  3. 8

    今オフ日本史上最多5人がメジャー挑戦!阪神才木は“藤川監督が後押し”、西武Wエースにヤクルト村上、巨人岡本まで

  4. 9

    崖っぷち渋野日向子に「日本人キャディーと縁を切れ」の声…外国人起用にこれだけのメリット

  5. 10

    くも膜下出血で早逝「ブラックモンブラン」41歳副社長の夫が遺してくれたもの…妻で竹下製菓社長が告白