「ダ・ヴィンチ・ゴースト」トビー・レスター著、宇丹貴代実訳
<人間小宇宙論の系譜>
レオナルド・ダビンチの描いた、円と正方形に囲まれた男の像はよく知られているが、実はこれはローマ帝国時代初期のウィトルウィウスなる人物の概念を視覚的に表現したものだという。円は宇宙と聖なる存在を、正方形は地上と俗世的な存在を表し、人体はその2つの形にぴったり収まる。人体はこの世そのものの縮小版であるという人間小宇宙(ミクロコスモス)論は何世紀にもわたってヨーロッパの宗教、科学、芸術を推進してきた。この人体図に関わる思想の系譜をまとめたノンフィクション。
(筑摩書房 1900円)