「致死量未満の殺人」三沢陽一著
■アザサ・クリスティー賞受賞作
花帆が夫と営む喫茶店を訪ねてきた大学時代のゼミ仲間の龍太が、15年前の弥生殺しを告白する。15年前、龍太ら5人のゼミ生は、教授の金巻の別荘に招待されるが、滞在中に弥生が何者かに毒殺されるという事件が発生したのだ。才色兼備の弥生は、周囲の人間を苦悩の底に陥れる悪女でもあり、龍太ら他の4人は全員がその被害者だった。龍太は、殺害に追い詰められた経緯から、使用したメチル水銀の入手方法など、事細かに花帆に語り出す。花帆の脳裏にも、雪で閉ざされた密室の中で、犯人がどうやって弥生だけに毒を飲ませることができたのか、お互いに疑心暗鬼になった当時の記憶がよみがえる。
アガサ・クリスティー賞を受賞した本格ミステリー。
(早川書房 1600円)