「亜洲狂詩曲 アジアン ラプソディ」中野正貴著

公開日: 更新日:

■「いつも切なく、物悲しく、そして美しい」アジアの風景

 35年の歳月をかけ、アジア10カ国で撮影したそれぞれの国の日常の断片を年次や地域に関係なくシャッフルし、著者が感じた「アジアというひとつの国」を構築した写真集。

 見開きの左側のページに孫と祖母のほほ笑ましい写真(中国・上海の浦東)を配したかと思えば、右側はタイの歓楽街パッポン通りの妖しげな店の前に座り込む親子らしき姿を写した写真が並ぶという具合だ。

 路上を埋め尽くした人から車中の人々まで、すべての目が頭上の大型スクリーンを見つめている風景は、香港がイギリスから中国へ返還された1997年7月1日のその瞬間をとらえた写真だ。

 この作品は例外で、他は淡々と流れていく、その国のなんでもない日の日常の積み重ねだ。日本もまぎれもなくアジアの一員。路上でどんぶりを片手に一心に食事をする労働者(大阪・西成)や、米兵相手の店が並ぶ沖縄・辺野古の社交街、そして震災後の宮城・志津川の風景も収録されている。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    中学受験で慶応普通部に進んだ石坂浩二も圧倒された「幼稚舎」組の生意気さ 大学時代に石井ふく子の目にとまる

  2. 2

    横浜とのFA交渉で引っ掛かった森祇晶監督の冷淡 落合博満さんは非通知着信で「探り」を入れてきた

  3. 3

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  4. 4

    国宝級イケメンの松村北斗は転校した堀越高校から亜細亜大に進学 仕事と学業の両立をしっかり

  5. 5

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  1. 6

    日本人選手で初めてサングラスとリストバンドを着用した、陰のファッションリーダー

  2. 7

    【京都府立鴨沂高校】という沢田研二の出身校の歩き方

  3. 8

    「核兵器保有すべき」放言の高市首相側近は何者なのか? 官房長官は火消しに躍起も辞任は不可避

  4. 9

    複雑なコードとリズムを世に広めた編曲 松任谷正隆の偉業

  5. 10

    中日からFA宣言した交渉の一部始終 2001年オフは「残留」と「移籍」で揺れる毎日を過ごした