「若者を殺し続けるブラック企業の構造」川村遼平著
■ブラック企業
去年の流行語大賞のトップテンにも入った「ブラック企業」。アベノミクス格差社会でのさばる労働搾取の実態は?
■不況下で過酷化する雇用慣行と過労死の実態
若者の労働相談を受けるNPO法人に関わり、大学院生の今は事務局長を務める著者。ブラック企業問題は最初からつぶさに知る。たとえば「幹部候補パート」という名目で小売店に勤めた女性。労働時間だけは「幹部候補」で給与や福利の面では「パート」という待遇に苦しみ、自殺に至った。背景には正規・非正規の別を会社の意図で決定できるという日本独自の労働慣行だ。女性の母は組合に相談。ところが応対した組合幹部は遺族が騒ぐと「会社がつぶれてもっと多くの人が命を落とすかもしれないんですよ」と言い放ったという。企業別労組は働き過ぎを許してきたのだ。不況下で過酷化する雇用慣行と過労死の多様化の実態がよくわかる。
(KADOKAWA 800円)