「瓶の中」高峰秀子著

公開日: 更新日:

■さまざまな顔を持った大女優がつづったフォトエッセー

 2010年に亡くなった大女優の生誕90年を記念して復刻されたグラフィックエッセー。エッセイストとしても活躍した著者が、多くの著作の中でも特にお気に入りだったという本書は、収集したさまざまな愛用品についての思い出を写真を添えてつづる。

 例えば、「人間が作った光の中でロウソクの炎ほど美しいものはないと私は思っている」と始まる「燭台」という題の一文。仏壇も神棚もないが、一年中ロウソクは欠かさないので、家には国内外の旅先で買い求めたいくつもの燭台があったという。アメリカで招かれたキャンドルディナーの体験を振り返りながら、便利さに慣れ過ぎた人々に、時に心のふるさとを思い出させてくれるロウソクの炎を見つめるよう勧める。

 その他、ヨーロッパで買い求めたり、散歩の途中で拾った石を洗っては使っているという夫(映画監督の松山善三氏)の仕事机の上に転がる文鎮、年老いたお手伝いさんへのお土産に買った天眼鏡、そして古道具屋に転がっていた古いおひなさまの道具「湯桶」を転用した食卓の「しょうゆつぎ」など。普段は女優として人から与えられたセリフを口にするのが仕事だった著者が、日々の暮らしを彩るモノへの思いや人生について、等身大の女性の言葉にしてつづる。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    朝ドラ「あんぱん」教官役の瀧内公美には脱ぎまくった過去…今クールドラマ出演者たちのプチ情報

  2. 2

    中井貴一の“困り芸”は匠の技だが…「続・続・最後から二番目の恋」ファンが唱える《微妙な違和感》の正体

  3. 3

    大阪万博会場の孤島「夢洲」で水のトラブル続出の必然…トイレ故障も虫大量発生も原因は同じ

  4. 4

    渋谷区と世田谷区がマイナ保険証と資格確認書の「2枚持ち」認める…自治体の謀反がいよいよ始まった

  5. 5

    Kōki,主演「女神降臨」大爆死で木村拓哉がついに"登場"も リベンジ作品候補は「教場」か「マスカレード」シリーズか

  1. 6

    森友文書の一部欠落で財務省が回答…公表された概要リストに「安倍昭恵」の名前

  2. 7

    巨人阿部監督がオンカジ送検の増田大輝を「禊降格」しないワケ…《中心でなくても、いないと困る選手》

  3. 8

    早実初等部を凌駕する慶応幼稚舎の人脈網…パワーカップルを惹きつけるもう一つの理由

  4. 9

    オンカジ騒動 巨人オコエ瑠偉が「バクダン」投下!《楽天の先輩》実名公表に現実味

  5. 10

    迷走続く「マレリ・ホールディングス」再建…金融界の最大の懸念は日産との共倒れ