プーチンは自分より強い者とは戦わない

公開日: 更新日:

■「嘘だらけの日露近現代史」倉山満著

 ロシア国家とロシア人の特徴をとらえた好著だ。特にプーチン論が秀逸だ。1999年12月31日、半年の任期を残してエリツィン大統領が辞任し、プーチン首相を大統領代行に任命した。この時点からプーチンの戦略は一貫しているとの見方を倉山満氏は示し、3つの特徴を指摘する。

〈第一の対象は、ロシア国内の権力掌握。クレムリン宮殿を舞台に行われるロシア政界の権力闘争だけではなく、チェチェンなど分離独立を企む勢力もこの範囲内の敵です。

 第二の対象は、旧ソ連邦諸国です。エリツィンのときにCIS(引用者注*リトアニア、ラトビア、エストニアを除く旧ソ連構成諸国によって構成される独立国家共同体)として緩やかな連合を組んだとはいうものの、実質はそれぞれが独立国として生きていました。しかし、プーチンにとっては野心の象徴です。話題のウクライナなどはまさにここです。紛争を起こしたグルジアもそうです。

 第三の対象は、旧衛星国です〉

 最近、ロシアは、シリアやイエメンに関与し始めたが、それは、この2国がソ連時代に衛星国に準じる地位にあったからだ。国際社会が激しく反発しないならば、地域紛争に「善意の調停者」のごとく関与して、ロシアの権益を拡大しようとする帝国主義政策をプーチンは推進している。プーチンの帝国主義政策にアメリカが激しく反発している。それだから「イスラム国」に対する共同歩調をアメリカとロシアが取れないのだ。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元横綱・三重ノ海剛司さんは邸宅で毎日のんびりの日々 今の時代の「弟子を育てる」難しさも語る

  2. 2

    巨人・岡本和真を直撃「メジャー挑戦組が“辞退”する中、侍J強化試合になぜ出場?」

  3. 3

    3年連続MVP大谷翔平は来季も打者に軸足…ドジャースが“投手大谷”を制限せざるを得ない複雑事情

  4. 4

    高市政権大ピンチ! 林芳正総務相の「政治とカネ」疑惑が拡大…ナゾの「ポスター維持管理費」が新たな火種に

  5. 5

    自民党・麻生副総裁が高市経済政策に「異論」で波紋…“財政省の守護神”が政権の時限爆弾になる恐れ

  1. 6

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 7

    沢口靖子vs天海祐希「アラ還女優」対決…米倉涼子“失脚”でテレ朝が選ぶのは? 

  3. 8

    矢沢永吉&甲斐よしひろ“70代レジェンド”に東京の夜が熱狂!鈴木京香もうっとりの裏で「残る不安」

  4. 9

    【独自】自維連立のキーマン 遠藤敬首相補佐官に企業からの違法な寄付疑惑浮上

  5. 10

    高市政権マッ青! 連立の“急所”維新「藤田ショック」は幕引き不能…橋下徹氏の“連続口撃”が追い打ち