著者のコラム一覧
香山リカ精神科医・立教大学現代心理学部映像身体学科教授

1960年、北海道生まれ。東京医科大卒。NHKラジオ「香山リカのココロの美容液」パーソナリティー。著書に「執着 生きづらさの正体」ほか多数。

永田町にいるすべての男たちに読んでもらいたい

公開日: 更新日:

「つながる セックスが愛に変わるために」代々木忠著

 これはベテランAV監督の書いたセックスの指南書か? タイトルや表紙からはそう見えるかもしれない。しかし、本書の核心はそこにあるわけではない。無数のAVの撮影や心にトラウマを抱えた女優たちとのかかわりを通して、著者は「芯を持った人間になれ」「何ごととも真剣に向き合え」という普遍的な人生観に行き着く。その思考の過程がつぶさにかつ興味深く書かれた人生の本、それが本書である。

 著者は、「愛し合える女性に巡り合えない」と風俗通いを続けたり、AVの撮影現場でさえ自分がどう見えているかを気にして目の前の女性に向き合えない男性たちにとくに厳しい。「かくあるべき」という固定観念に縛られ「社会の歯車」として従順に働くようになった彼らに「国策の犠牲者」と同情を寄せながらも、「進化した女性が男性を引っ張り上げるしかない」とややあきらめ気味でもある。

 あなたは、AV監督や女優たちに「頭でっかち」「男の勘違い」「他力依存」と揶揄され、悔しくはないだろうか。もし、少しでもそれに反発したいのなら、まずは身近にいる妻やパートナーに「相手を愛おしみ慈しむ思い」を真剣に伝えてほしい。何もそれはセックスとは限らず、言葉でも日常の態度でもいいのだ。

 ひとりの人間と本気で向き合えない男は、仕事とも社会とも本当の意味ではつながれない。いまは「ヘタを打つより様子を見たい」と言っていられる時代ではない。すべての人が本気を出さないと、この国はたいへんなことになってしまう。そのためにもまず身近な人から目をそむけずに、しっかりとつながってほしい。私は、永田町にいるすべての男たちにぜひ本書を読んでもらいたいと願っている。(新潮社 550円+税)


【連載】香山クリニックのしなやか本棚

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    カーリング女子フォルティウス快進撃の裏にロコ・ソラーレからの恩恵 ミラノ五輪世界最終予選5連勝

  2. 2

    南原清隆「ヒルナンデス」終了報道で心配される“失業危機”…内村光良との不仲説の真相は?

  3. 3

    契約最終年の阿部巨人に大重圧…至上命令のV奪回は「ミスターのために」、松井秀喜監督誕生が既成事実化

  4. 4

    「対外試合禁止期間」に見直しの声があっても、私は気に入っているんです

  5. 5

    高市政権「調整役」不在でお手上げ状態…国会会期末迫るも法案審議グダグダの異例展開

  1. 6

    円満か?反旗か? 巨人オコエ電撃退団の舞台裏

  2. 7

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  3. 8

    箱根駅伝3連覇へ私が「手応え十分」と言える理由…青学大駅伝部の走りに期待して下さい!

  4. 9

    「日中戦争」5割弱が賛成 共同通信世論調査に心底、仰天…タガが外れた国の命運

  5. 10

    近藤真彦「合宿所」の思い出&武勇伝披露がブーメラン! 性加害の巣窟だったのに…「いつか話す」もスルー