「ひきがね」島崎ろでぃー写真、ECD文

公開日: 更新日:

 東日本大震災が発生した2011年以降、その4カ月前に始まった「アラブの春」に触発されたかのように日本の若者たちも路上で、さまざまな声を上げるようになった。

 脱原発、原発再稼働反対を訴える街頭デモに始まり、目に余るヘイトスピーチへのカウンター(抗議行動)、LGBTパレードへと続き、昨年夏の安保関連法案反対行動でその熱気は最高潮に達する。

 政権や社会に対する若者たちの行動は、60年代、70年代のそれとは一線を画し、それまで傍観者だった同年代はもちろん、中高年をも巻き込み、新たな文化として定着しつつある。

 本書は、「一参加者」として各地の路上に立ち、行動を続けてきた写真家とラッパーによる、コラボレーション写真集。

 写真は、がれきの中で早く日常を取り戻そうと動き出した人々や、打ち上げられた漁船の他には何もなくなった絶望的な風景の中に希望を見いだすように揚げられたこいのぼりなど、震災1カ月後の被災地から始まる。

 続いて、これまでのデモの風景とは一味違い、幼い子どもたちの姿が目立つ「パパママぼくの脱原発ウォークin武蔵野・三鷹」、根も葉もない差別を助長するヘイトデモとそれを阻止しようとする人々、両者の間に立つ警察の三つ巴による一触即発の緊張感(新大久保)、沖縄・辺野古の新基地建設反対行動、そして安保関連法案反対の声を上げ、居てもたってもいられず国会前に集まった人々の真剣なまなざしなど。一葉一葉の写真が、その場の熱と静かなる怒りを伝える。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  2. 2

    中学受験で慶応普通部に進んだ石坂浩二も圧倒された「幼稚舎」組の生意気さ 大学時代に石井ふく子の目にとまる

  3. 3

    さすがチンピラ政党…維新「国保逃れ」脱法スキームが大炎上! 入手した“指南書”に書かれていること

  4. 4

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  5. 5

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  1. 6

    中日からFA宣言した交渉の一部始終 2001年オフは「残留」と「移籍」で揺れる毎日を過ごした

  2. 7

    有本香さんは「ロボット」 どんな話題でも時間通りに話をまとめてキッチリ終わらせる

  3. 8

    巨人は国内助っ人から見向きもされない球団に 天敵デュプランティエさえDeNA入り決定的

  4. 9

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  5. 10

    佐藤輝明はWBC落選か? 大谷ジャパン30人は空前絶後の大混戦「沢村賞右腕・伊藤大海も保証なし」