フランス革命から無差別テロまで 21世紀は「テロの世紀」か?

公開日: 更新日:

「無差別テロ」金惠京著

 もはや連日当たり前のものとなったかのようなテロ報道。本当に21世紀は「テロの世紀」なのか――?

 現代のテロの特徴は軍人も市民もおかまいなしに無差別で攻撃する過激な暴力行為であること。しかし近代のテロはむしろ最小の労力で政敵を消すための政治的手段だった。

 始まりはフランス革命期に「革命の敵」を排除したジャコバン派の暗殺や拷問。それが20世紀に入ると政治権力に抵抗するための民衆の手段になり、政治的な意味も変化する。伊藤博文を暗殺した韓国の安重根は日本史ではテロリストだが、韓国史では民族の英雄となる。

 やがて60年代の日本赤軍や反日武装戦線など左翼テロのあと、80年代からヒズボラによるベイルート米大使館攻撃を機に「自爆テロ」がしだいに増えていく。90年代以降、左翼に代わって宗教原理主義や過激化した民族主義がテロの背景となり、オウム真理教による地下鉄サリン事件で市民を相手にした無差別テロが一気に横行し始めるのだ。

 韓国から日本へ留学してテロ研究に入った国際政治学者による本書は、国際法・政治におけるテロとゲリラ戦の定義の違い、被害者の目から捉えたテロなど類書にない総合的な見地からテロを論じている。(岩波書店 2000円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本は強い国か…「障害者年金」を半分に減額とは

  2. 2

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  3. 3

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  4. 4

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  5. 5

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  1. 6

    侍Jで加速する「チーム大谷」…国内組で浮上する“後方支援”要員の投打ベテラン

  2. 7

    石破前首相も参戦で「おこめ券」批判拡大…届くのは春以降、米価下落ならありがたみゼロ

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    高市政権の物価高対策「自治体が自由に使える=丸投げ」に大ブーイング…ネットでも「おこめ券はいらない!」