「イラストで見る昭和の消えた仕事図鑑」澤宮優/文 平野恵理子/イラスト

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時代の変化と共に姿を消した昭和の仕事115種

 平成生まれで、「三助」という仕事があったことを知っている人はどのくらいいるだろうか。渋谷の「恋文横丁」の名は知っていても、その由来もおそらく分からないだろう。本書は、「三助」のように現在は消えてしまった、または消えつつある昭和の時代の庶民の仕事を紹介するイラスト図鑑。

 平成13年まで東京駅にもいた「赤帽」もそんな仕事の一つ。正式には「手廻品運搬人」と呼ばれ、出発・到着客の荷物を、駅の構内入り口から待合室や列車まで、あるいはその逆のルートを運んだ。赤帽は駅の職員ではなく、構内営業を許された民間の個人業者で、明治29年に山陽鉄道で始まり、平成19年岡山駅を最後に日本の駅からその姿を消した。ちなみに昭和34年当時の料金は手荷物1個あたり25円だった。

 同じく運輸関係の仕事には、国鉄時代、ラッシュ時に電車からはみ出した乗客の背中を押して車両内に詰め込む「押し屋」もいた。昭和30年に新宿駅で学生アルバイトに作業をさせたのが始まりで、乗客が着ぶくれる冬には夏の2倍以上の人員が配置された。

 かつては女性の憧れの職業だった電話交換手や、エレベーターガールも設備の自動化とともに姿を消した。

 戦前まであった「テン屋」は、煮魚やかまぼこなど副食だけを売り、主食は客が持参して店内で食事させる形態の飲食店。行商や労働者が移動先で利用したのだとか。

 世界恐慌で町に失業者があふれた昭和6年ころに登場した「つぶ屋」は、失業したサラリーマンを装って本物のサラリーマン家庭から金を恵んでもらう詐欺商売。「会社が潰れた」と口にするその手口から「つぶ屋」と呼ばれたそうだ。

 その他、鍬や杵、鉈、天秤棒などの柄や棒を作る専門の「棒屋」といった、プロフェッショナルな技が必要な職人仕事など、全115種を網羅。その仕事内容から収入などのデータをイラストとともに解説する。

 ちなみに冒頭の「三助」は、客の背中流しも行う銭湯の下男。釜たき・湯加減の調整・番台業務の銭湯の3つの主な仕事を助けたから三助と呼ばれた。

 また渋谷の「恋文横丁」は米兵と恋に落ちた日本女性たちのラブレターを翻訳・代筆する「代書屋」が集まっていたのでそう呼ばれるようになったのだ。

 著者は昭和の仕事は、「仕事を通してぬくもりや感情を交換する関係をベース」に成り立っていたという。人を介して仕事が成立していたから人を大事にし、人を大事にする精神は同じようにモノを大事にした。そこに昭和を支える精神があったと語る。

 効率重視で消えていったこうした仕事が、人間にとって大切なことは何かを教えてくれるような気がする。(原書房 2200円+税)

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