「どすこい!相撲と乗り物」飯塚さき氏

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「どすこい!相撲と乗り物」飯塚さき氏

 近年、相撲に向けられる視線が熱い。一昨年、年6回の本場所チケットが完売し、昨年も同様だった。これは若貴人気で盛り上がった平成8年以来28年ぶりの快挙だという。

 本書は子どもの頃から相撲が身近であった著者が、大相撲の力士や親方、裏方の日々の通勤や巡業時の乗り物を中心に、生活の舞台裏なども紹介するひと味違ったルポである。読んだら誰かに話したくなること請け合いだ。

 相撲といって思い浮かぶのは東京・墨田区の両国国技館だろう。現在、相撲部屋は45あり、近いところでは中村部屋から国技館まで徒歩3分、一方遠いところでは二所ノ関部屋が茨城県にあり電車で1時間半かかるという。年3回の東京場所中、国技館まで、あの大きな体の力士たちはどのように通っているのだろう。

「まず、現役力士は車とバイクの運転、さらに本場所中は自転車通勤も禁止。部屋が国技館に近いかどうかにかかわらず、利用交通機関は番付によって決まります。幕下以下の若い衆は徒歩や電車、バスなど公共交通機関利用、関取衆はタクシーや運転手を雇って自家用車で来るなどして、国技館の南門の前に車を止め歩きます。横綱と大関は、送迎車が直接館内の地下駐車場まで入るので歩きません」

 若い衆は給料がないので交通費は日本相撲協会から支給されるが、関取衆は十両に上がれば給料が出るので交通費の支給はない。月に100万円以上の給料だから安泰か、と言えばさにあらず。

「元横綱照ノ富士関などケガで一時的に幕下まで落ちたことがありましたが、関取の待遇は一切受けられず車も使えません。元の生活を取り戻すには、もう一度番付を上げるしかない。厳しい世界です」

 一方、地方場所での開催は令和5年以前は風物詩といわれた「相撲列車」で200~300人の力士や裏方がまとまって移動したが、現在は部屋ごとに新幹線で移動する。親方と関取衆はグリーン車、若い衆は普通車の指定席で、新幹線代はどの番付の力士でも満額出る。ちなみに座席の背もたれは倒さず座るのが暗黙のルールだという。ただし、地方場所でも福岡へは飛行機を利用。

「カウンターで体重を聞かれることがあり、航空会社が機内の重量に偏りが出ないように座席を配置します。親方衆と横綱、大関は普通席より上のプレミアムシートかクラスJ、三役以下の関取衆は普通席です。普通席に体が大きい力士が座るには3席で2人、4席に2~3人が必要で、もちろん全席分の料金を払いますよ」

 新弟子になると半年間、相撲教習所に通い、こうした公共マナーや力士としての心得などを徹底的に叩きこまれるのだという。

「エレベーターは重量ブザーが鳴ったら降りるなど、力士ならではの注意もあって、なかなか面白いと思いますね(笑)」

 ある日、こんなことがあった。タクシーが稽古場の前に止まりドアを開けた。すると付け人が座席にぱっと浴衣をかけ、朝稽古を終えたばかりの関取がすっと座った。稽古で体についた土で座席が汚れないように--。

 本書では日頃見ることのない力士たちの素顔や笑顔の写真を多数収録するほか、アマチュア相撲にも触れている。

「今の力士たちの力は総合的に見て昔より強くなっていると思います。いろいろな面でもっと相撲を知ってほしいですね」 (交通新聞社 1100円)

▽飯塚さき(いいづか・さき)1989年生まれ。さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。相撲ライター。著書に「おすもうさん直伝!かんたん家ちゃんこ」「日本で力士になるということ 外国出身力士の魂」など。両国国技館で館内の英語ガイドを担当。

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