「吼えよ 江戸象」熊谷敬太郎著

公開日: 更新日:

 治安が悪化し、鬱屈した空気が蔓延していた享保の時代。将軍吉宗は、不満のたまった人民を喜ばせる奇策として、シャム国から取り寄せた白象を長崎から江戸まで移送せよとの命を下した。船で一気に運ぶのではなく、長崎街道から馬関海峡を渡り、山陽道を経て大坂、さらに京街道、東海道、箱根の峠を越えて江戸へとつながる道354里を歩いていく計画だ。ひょんな成り行きから命がけの任務を背負うことになったのは、小石川養生所の医師・田辺豊安と、暴れる象をなだめることのできる少女・千代。果たして巨象は無事に江戸までたどりつけるのか――。

 本書は、享保14年に吉宗の命で象が長崎―江戸間を歩いて日本中を沸かせた史実に基づいて描かれた長編時代小説。人々が象を見たことがなかった時代、吉宗の一声で始まった象と医師と少女の珍道中は、行く先々でさまざまな大騒動を引き起こす。少女から女へと変わっていく千代と豊安のラブストーリーにもなっている。(NHK出版 2200円+税)


【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    福原愛が再婚&オメデタも世論は冷ややか…再燃する「W不倫疑惑」と略奪愛報道の“後始末”

  2. 2

    「年賀状じまい」宣言は失礼になる? SNS《正月早々、気分が悪い》の心理と伝え方の正解

  3. 3

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  4. 4

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  5. 5

    国民民主党・玉木代表「ミッション・コンプリート」発言が大炎上→陳謝のお粗末…「年収の壁」引き上げも減税額がショボすぎる!

  1. 6

    どこよりも早い2026年国内女子ゴルフ大予想 女王候補5人の前に立ちはだかるのはこの選手

  2. 7

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  3. 8

    「M-1グランプリ2025」超ダークホースの「たくろう」が初の決勝進出で圧勝したワケ

  4. 9

    「核兵器保有すべき」放言の高市首相側近は何者なのか? 官房長官は火消しに躍起も辞任は不可避

  5. 10

    楽天が変えたい「18番は田中将大」の印象…マエケンに積極譲渡で“背番号ロンダリング”図る