「吼えよ 江戸象」熊谷敬太郎著

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 治安が悪化し、鬱屈した空気が蔓延していた享保の時代。将軍吉宗は、不満のたまった人民を喜ばせる奇策として、シャム国から取り寄せた白象を長崎から江戸まで移送せよとの命を下した。船で一気に運ぶのではなく、長崎街道から馬関海峡を渡り、山陽道を経て大坂、さらに京街道、東海道、箱根の峠を越えて江戸へとつながる道354里を歩いていく計画だ。ひょんな成り行きから命がけの任務を背負うことになったのは、小石川養生所の医師・田辺豊安と、暴れる象をなだめることのできる少女・千代。果たして巨象は無事に江戸までたどりつけるのか――。

 本書は、享保14年に吉宗の命で象が長崎―江戸間を歩いて日本中を沸かせた史実に基づいて描かれた長編時代小説。人々が象を見たことがなかった時代、吉宗の一声で始まった象と医師と少女の珍道中は、行く先々でさまざまな大騒動を引き起こす。少女から女へと変わっていく千代と豊安のラブストーリーにもなっている。(NHK出版 2200円+税)


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