• facebook  
  • twitter  
  • Facebook Messenger

「会社に頼らないで一生働き続ける技術」井上久男氏

 大企業でも先行き不安を覚える時代。「この会社にずっといていいのか」と悩むサラリーマンも多い。

「40歳定年」というセンセーショナルな文言が躍るこの本は、本紙連載をまとめた一冊だ。

「決して『40歳で会社を辞めろ』と勧める本ではありません。今の仕事に満足している人はもちろん、人付き合いが苦手な人、ストライクゾーンが狭い人はそのままでいいと思うんです。ただ、今は向上心が強く、自分のキャリア設計を考えている若者も多い。誤解を恐れずに言えば“小ざかしい人”も結構増えています。この手の小ざかしい人は独立や起業のハウツーばかり聞いてくるのですが、本当に大切なことが他にもあるんですよね」

 つまり、これはハウツー本ではない。成功者たちのドキュメンタリーだが、そこから気づきや問題意識を得られる構成だ。

「40代で独立して成功した約20人に取材しましたが、彼らの共通項は『自責と覚悟』。失敗しても人のせいにしない、景気低迷などの外的環境のせいにしない。クヨクヨせず次の展開を考える、前向きな姿勢も共通項。取材を通して、僕自身も新たな気づきがありましたからね」

 著者自身の経験も参考例だ。NECから中途採用で朝日新聞社に入社。経済部で自動車産業を担当したのも、専門特化すれば書く仕事が一生できると考えたから。そして40歳で独立した。

「自動車はあらゆる下請け産業が結集した業界です。自動車を通して多種多様な産業を勉強できて、幅広く見る目を養えました。ところが、組織の中で出世街道をゆく主流派からすれば、僕は完全に変人扱いでしたよ(笑い)」

 無難な意見しか通らない組織の中で、斬新な企画を出して意見を堂々と言う性分は、病原菌のように扱われたこともある。

「サラリーマン社会では組織や上司に従順な人間が評価されます。考え方が均質化された企業も多い。アイデアや引き出しが豊富でも、扱いにくい異端児の価値観を認めない傾向がありますから」

 異端児になれ、ではない。やりたいことがあるなら、その意志を会社に伝えるべきだという。

「自分のキャリアをどう構築するかを決めるのは自分です。個々が持つ『キャリア権』を意識したほうがいい。働き方やキャリアに対して“くすぶり感”を持っている人に、ぜひ読んでほしいですね」

 個人の働き方に新たな視点を提案する内容だが、今の日本企業に潜む問題点をあぶり出しているのかもしれない。(プレジデント社1400円+税)

▽いのうえ・ひさお 1964年、福岡県出身。九州大学卒業。NECを経て、朝日新聞社に転職。名古屋・東京・大阪の経済部で、主に自動車産業を担当。04年に独立。著書に「メイドインジャパン驕りの代償」「トヨタ愚直なる人づくり」など。福岡県豊前市政策アドバイザーも務める。


日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    お酌は一切させず 麻木久仁子さんが見たタモリの“別の顔”

  2. 2

    引っ越す度にゾ~…松原タニシ怖くて貧しい事故物件暮らし

  3. 3

    オリラジ中田が消えたワケ…妥当すぎる正論コメントがアダ

  4. 4

    元TOKIO山口達也が5億円豪邸売却へ 収入失い債務資金枯渇

  5. 5

    虐待問題解決の本質とは 黒川祥子さんが取材経験から語る

  6. 6

    通信機器宣伝マンから再出発 “ギター侍”波田陽区さんは今

  7. 7

    「すれ違いが原因」に違和感 NHK桑子アナの離婚の真相は?

  8. 8

    退所しても人気絶大 ジャニーズは3日やったらやめられない

  9. 9

    前川清さん語る運の尽き 演歌界の“酒豪四天王”に誘われて

  10. 10

    国会大幅延長は安倍3選のためか 総裁選工作に血税90億円

もっと見る