「大きくなる日」佐川光晴氏

公開日: 更新日:

主夫歴25年の視線が生きる「9つの連作」

 札幌の養護施設で暮らす少年たちがたくましく育っていく姿を描いた、「おれのおばさん」シリーズで知られる著者の最新作。今作は、4人家族の横山家の長男にして末っ子・太二の保育園から中学卒業までの日々を中心に、一家に関わる人々の小さな転機の日を描く、9つの連作短編集だ。

「『おれのおばさん』で描いた少年たちはタフな面々ですが、今回はヒーロー的ではない、ごく普通の子供を主人公に据えました。日常生活というのは大体にして平凡なものですが、それでも子供たちに悩みがないわけではなく、成長を阻む殻の中で必死にもがいていると思うんですね。それは親である大人たちも同じこと。そんな悩める人たちが、新たな一歩を踏み出す物語を紡いでみました」

 早くも反抗期に入った小学校4年の姉・弓子と、両親の気持ちの噛み合わなさを気にしつつ、保育園の卒園式で頭がいっぱいの5歳児太二。祖母の介護をめぐって喧嘩する両親に心を痛める太二の同級生・健人。少年サッカーチームのコーチを務める川村家の父親と他の父親との距離感……。登場人物たちはどこにでもいそうな人々で“そういう思いをしたことがある”と、思わず自分にその姿を重ねずにはいられない。「25年間、主夫として料理はもちろん、授業参観も先生やお母さんたちとの付き合いもやってきましたからね。ネタには事欠きません」と著者は笑う。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    3年連続MVP大谷翔平は来季も打者に軸足…ドジャースが“投手大谷”を制限せざるを得ない複雑事情

  2. 2

    自民党・麻生副総裁が高市経済政策に「異論」で波紋…“財政省の守護神”が政権の時限爆弾になる恐れ

  3. 3

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  4. 4

    最後はホテル勤務…事故死の奥大介さん“辛酸”舐めた引退後

  5. 5

    片山さつき財務相“苦しい”言い訳再び…「把握」しながら「失念」などありえない

  1. 6

    ドジャースからWBC侍J入りは「打者・大谷翔平」のみか…山本由伸は「慎重に検討」、朗希は“余裕なし”

  2. 7

    名古屋主婦殺人事件「最大のナゾ」 26年間に5000人も聴取…なぜ愛知県警は容疑者の女を疑わなかったのか

  3. 8

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  4. 9

    高市内閣支持率8割に立憲民主党は打つ手なし…いま解散されたら木っ端みじん

  5. 10

    《もう一度警察に行くしかないのか》若林志穂さん怒り収まらず長渕剛に宣戦布告も識者は“時間の壁”を指摘