盗聴法改悪で国民のプライバシーがさらされる

公開日: 更新日:

 先月、極めて問題の大きい重要法案が可決した。刑事訴訟法や組織犯罪処罰法などいくつかの法律を一本化して改正した「刑事訴訟法等改正法案」がそれだが、この中に含まれていた通信傍受法、いわゆる「盗聴法」の拡大により、我々のプライバシーがのぞかれ、警察の暴走を招く恐れがあるのだ。

 足立昌勝著「改悪『盗聴法』その危険な仕組み」(社会評論社 1700円+税)では、今回の法案によって何が変わり、今後どんな事態がやってくるのかを詳しく解説している。

 従来までも、犯罪捜査のため盗聴することは合法的に許されていた。しかし、1999年に成立した盗聴法には厳しい制約があり、対象となるのは薬物・銃器・集団密航・組織的殺人の4罪種。つまり、主に暴力団が行う犯罪や組織犯罪に限定されていた。

 盗聴に至る手続きも複雑で、全国どこの警察も通信会社本社のある東京に出向き、通信会社社員の立ち会いでの盗聴が条件とされていた。使い勝手が悪いことで、警察による盗聴の悪用を防いでいたと言える。

 ところが今回の盗聴法では一般刑法犯罪も対象となり、殺人や放火はもとより、傷害、窃盗、ポルノ処罰法違反としての提供罪および製造罪など、大きく拡大された。そして、指定した日数分の通話やデータを通信会社から送ってもらうことで、立会人なしでの盗聴が可能となった。警察が何を盗聴しているか、第三者による監視ができなくなったのだ。

 さらに、“将来の犯罪”も盗聴対象となった。例としては、薬物や銃の密売からの売りさばきなどが挙げられているが、対象が一般刑法犯罪になった今、警察が怪しいと感じた場合は誰もが盗聴対象となり、今後は予防的に捜査されたり、逮捕されるような事態も招きかねない。

 犯罪撲滅のみに利用されるのならいい。しかし、2013年に成立した特定秘密保護法もある。警察のやりたい放題を招く恐れはないのか、目を光らせたい。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  2. 2

    横綱・大の里まさかの千秋楽負傷休場に角界から非難の嵐…八角理事長は「遺憾」、舞の海氏も「私なら出場」

  3. 3

    2026年大学入試はどうなる? 注目は公立の長野大と福井県立大、私立は立教大学環境学部

  4. 4

    東山紀之「芸能界復帰」へカウントダウン着々…近影ショットを布石に、スマイル社社長業務の終了発表か

  5. 5

    「総理に失礼だ!」と小池都知事が大炎上…高市首相“45度お辞儀”に“5度の会釈”で対応したワケ

  1. 6

    大関取り安青錦の出世街道に立ちはだかる「体重のカベ」…幕内の平均体重より-10kg

  2. 7

    日中対立激化招いた高市外交に漂う“食傷ムード”…海外の有力メディアから懸念や皮肉が続々と

  3. 8

    義ノ富士が速攻相撲で横綱・大の里から金星! 学生相撲時代のライバルに送った痛烈メッセージ

  4. 9

    同じマンションで生活を…海老蔵&米倉涼子に復縁の可能性

  5. 10

    独立に成功した「新しい地図」3人を待つ課題…“事務所を出ない”理由を明かした木村拓哉の選択