著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「天晴れアヒルバス」山本幸久著

公開日: 更新日:

 主人公・高松秀子の勤めるアヒルバスでは、バスガイドもツアー企画を提出する。「浅草で恋の花を咲かせましょう 三十代限定! 巡り逢いツアー」とか、「男を磨き鍛える! オジサマ限定エステ&うまいものツアー」とか、「東京で森林浴! パワースポットもいっちゃお! 癒し&御利益で人生ステップアップツアー」など、すべて秀子の後輩たちが企画したツアーである。

 中には「東京都内で富士山にお詣りしちゃう富士塚巡り」などのマニアックなものもあったりする。そういう企画まで考えるのだから、バスガイドも楽ではない。さらに最近では外国人の客も増えて、そうなると通訳ガイドも同行することになるが、これがとんでもない男で、秀子は振り回される。

 そういうバスガイドの仕事の日々を描く本書は、アヒルバスシリーズの第2弾。前作の「ある日、アヒルバス」はテレビドラマになったが、山本幸久の小説には、他にもテレビドラマの原作にふさわしいものがたくさんある。もっとドラマ化してほしいものだ。

 主人公は前作に引き続き今回も高松秀子だが、続いているわけではないので、前作を未読でも大丈夫。秀子もアヒルバスに勤めて12年、もうベテランの域で後輩たちの指導にあたらなければならないが、私生活の幸せはいつ訪れるのか、それが気になる方はぜひとも本書を読まれたい。とうとう秀子に春が来そうなのだ。おお、大丈夫か秀子。(実業之日本社 1500円+税)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    横浜流星「べらぼう」ついに8%台に下落のナゼ…評価は高いのに視聴率が伴わないNHK大河のジレンマ

  4. 4

    ドジャース佐々木朗希「今季構想外」特別待遇剥奪でアリゾナ送還へ…かばい続けてきたロバーツ監督まで首捻る

  5. 5

    中日・中田翔がいよいよ崖っぷち…西武から“問題児”佐藤龍世を素行リスク覚悟で獲得の波紋

  1. 6

    元横綱白鵬が突然告白「皇帝の末裔」に角界一同“苦笑”のワケ…《本当だったらとっくに吹聴しています》

  2. 7

    元横綱白鵬 退職決定で気になる「3つの疑問」…不可解な時期、憎き照ノ富士、親方衆も首を捻る今後

  3. 8

    阿部巨人の貧打解消策はやっぱり助っ人補強…“ヤングジャイアンツと心中”の覚悟なし

  4. 9

    山本舞香は“ヤンキー”より“令嬢”がハマる?「波うららかに、めおと日和」《ふかふみコンビ》で人気急上昇

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも