北上次郎
著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「ヴェサリウスの秘密」ジョルディ・ヨブレギャット著、宮崎真紀訳

公開日: 更新日:

 スペイン初の万博を目前に控えた19世紀末のバルセロナを舞台にしたミステリーである。主人公は3人。まず、父親の死の知らせを受けて故郷に戻ってきた大学教授ダニエル。その死を殺人と信じる新聞記者フレーシャ。かくてこの2人は事件の真相を調べていくことになるが、そこに絡んでくるのが謎の医学生パウ・ジルベルト。

 実に盛りだくさんの小説である。ダニエルの父は若い女性の猟奇連続殺人事件を調べていた形跡があり、さらに父が残した手帳には、16世紀の解剖学者ヴェサリウスの大著「人体構造論」の幻の第8巻のことが言及され、不思議な暗号表が書かれていた。このヴェサリウスの幻の書が、物語の底流をずっと流れていく。一体、連続殺人事件とヴェサリウスはどう関係しているのか。

 下水道の冒険、馬車での追跡劇と、激しい動きと場面転換の鮮やかさで読ませる箇所もあれば、地下住民が登場したりして謎はどんどん深まっていく。

 謎解きに活劇に恋愛と、小説のさまざまな要素をえいっと全部放り込んでシェークしたような600ページに及ぶ長編だが、ラスト100ページが特に圧巻。そのラストにいたるまでも面白く、圧倒的に読ませるのだが、最後にギアが一段上がった感がある。

 著者はバルセロナ在住のスペイン作家。これがデビュー作である。今後が期待できる新人作家の登場だ。(集英社 1100円+税)

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    横浜にカジノ不要 藤木幸夫氏が危惧する「戦前に似た空気」

  2. 2

    安倍首相は真っ青「年金返せデモ」でよぎる“12年前の大敗”

  3. 3

    所属議員も鼻白む 自民党“ネトウヨ冊子”配布で参院選対策

  4. 4

    「ドトールのコーヒーはスタバよりも安い」は本当か?

  5. 5

    マエケンから一発の大谷 球宴HR競争出場をハーパー後押し

  6. 6

    巨人・小林「銀さんに全部負け」直撃取材に“弱気発言”連発

  7. 7

    大谷の打撃をエ軍首脳陣“放任”へ 凡打での助言が今季激減

  8. 8

    八幡カオルさんは試行錯誤の末“セクシー写真集”を自費出版

  9. 9

    「断熱オタク」に聞いた エコ住宅がなぜ広まらないのか?

  10. 10

    スカウト部長は佐々木絶賛も…巨人ドラ1逡巡に原監督の影

もっと見る

編集部オススメ

  1. {{ $index+1 }}

    {{ pickup.Article.title_short }}

もっと見る