「前に進むための読書論」山口真由著
東大法学部を首席で卒業し、弁護士として活躍中の著者は、自分とは異なる世界を生きるために本を読む。著者はかつて死刑囚と面会したことがあった。その少年は子どものころは優等生だったが、留学先の日本で孤独感にさいなまれ、学費を遊興費に使ってしまい、強盗殺人を犯した。自分も母親の期待に応えようとした少年と同じ優等生だったのに、なぜ激情に駆られて罪を犯さずにすんだのかと思ったとき、著者はトルーマン・カポーティの「冷血」を思い出した。そこには決してモンスターではない少年が狂気に転じる瞬間が描かれていた。
ノンフィクション、児童書など、著者をつくりあげた100冊の本を紹介。(光文社 740円+税)