「移民の経済学」ベンジャミン・パウエル著、藪下史郎監訳 佐藤綾野ほか訳

公開日: 更新日:

「移民の流入を防ぐため、メキシコとの国境に巨大な壁を築く」と言ったドナルド・トランプの発言に見られるように、昨今、移民へのネガティブな意見が声高に語られることが増えてきた。しかし、移民が入ってくることで自分たちの仕事が奪われ、治安も経済も悪化するのだから移民は排斥すべきだというロジックは、果たして本当なのか。

 本書は、移民問題に関するさまざまな専門家の学術研究をもとに米国の移民政策を考察した検証の書だ。

 現在、出生国以外の場所で生活する人々は世界総人口の約3%だが、米国では約4000万の居住者が外国生まれで、その約3分の1が不法移民だ。本書では、移民制限が完全に撤廃されると世界経済に50兆~150兆ドルの利益がもたらされるという経済学者の試算や、移民増加に批判的な学者の政策的見解を双方の立場から紹介する。

 不法移民に何をすべきか、国境開放化をどう考えるべきかについて、感情ではなく根拠をもとに議論する大切さを説いている。(東洋経済新報社 2800円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 2

    農水省ゴリ押し「おこめ券」は完全失速…鈴木農相も「食料品全般に使える」とコメ高騰対策から逸脱の本末転倒

  3. 3

    TBS「ザ・ロイヤルファミリー」はロケ地巡礼も大盛り上がり

  4. 4

    維新の政権しがみつき戦略は破綻確実…定数削減を「改革のセンターピン」とイキった吉村代表ダサすぎる発言後退

  5. 5

    3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い

  1. 6

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  2. 7

    粗品「THE W」での“爆弾発言”が物議…「1秒も面白くなかった」「レベルの低い大会だった」「間違ったお笑い」

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  5. 10

    巨人阿部監督の“育成放棄宣言”に選手とファン絶望…ベテラン偏重、補強優先はもうウンザリ