「性と国家」北原みのり、佐藤優著

公開日: 更新日:

 女性のためのセックストイショップを営む最先鋒フェミニストと“巨人”が、性の視点からこの国のゆがみを暴き出す対談集。

 佐藤氏は、政争に巻き込まれ拘置所で500日余りの独房生活を送った体験から、現代思想におけるフェミニズムの重要性に関心を持ったという。なぜなら「逮捕されたことで、国家というものが男権的で、とても暴力的なものだということを再認識」したからだと。同じく、わいせつ物陳列罪で逮捕された経験を持つ北原氏は、その体験を通し、「女性の体をどこまでさらすか、暴力的な表現にどこまで挑戦するか」を、表現の自由の主たる課題としてこだわってきた日本の性の価値観に対して、改めて怒りを感じた、と語る。

 そんな2人が、ポルノ情報が日常的にあふれ、アダルト業界や風俗産業など、合法的・クリーンに性的搾取や暴力が行われている日本社会の現状や、戦時中の「慰安婦」などを例に、人間を管理するために最も重要なファクターとして国家に利用された性、在沖縄米軍の軍属による沖縄女性死体遺棄事件から考える沖縄への差別構造、そしてジェンダー論に至るまで、縦横無尽の話題で男の性欲や女の体を活用する日本という国家を斬る。(河出書房新社 820円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    【原田真二と秋元康】が10歳上の沢田研二に提供した『ノンポリシー』のこと

  3. 3

    カーリング女子フォルティウスのミラノ五輪表彰台は23歳リザーブ小林未奈の「夜活」次第

  4. 4

    3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い

  5. 5

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  1. 6

    福山雅治&稲葉浩志の“新ラブソング”がクリスマス定番曲に殴り込み! 名曲「クリスマス・イブ」などに迫るか

  2. 7

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  3. 8

    松岡昌宏も日テレに"反撃"…すでに元TOKIO不在の『ザ!鉄腕!DASH!!』がそれでも番組を打ち切れなかった事情

  4. 9

    年末年始はウッチャンナンチャンのかつての人気番組が放送…“復活特番”はどんなタイミングで決まるの?

  5. 10

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった