「税金亡命」佐藤弘幸著

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 近年、悪質な脱税者の数が増加の一途をたどり、その手口も複雑化しているという。また脱税スキームを入れ知恵する税理士や国税OBも存在し、国税庁も頭の痛いところ。本書は、アジア屈指のタックスヘイブン・香港を舞台に、事業家、国税OB、国税の3者の熾烈な戦いを描いた経済小説。

 産廃業と不動産業の2つの会社を経営する木戸は、自社ビルの売買で10億円の利益を得た。まともに申告すると3億円を税金にもっていかれてしまう。そこで木戸は、国税OBの税理士2人を抱えるMAC税理士法人に相談し、脱税スキームの指南を依頼する。MAC代表の松嶋は自らがオーナーである現地法人をうまく使って、木戸の利益を隠してしまう。こうした動きに不審を覚えたのが、東京国税局の統括国税実査官(情報担当)、通称「情報トージツ」の高松。高松の執拗な追及に木戸、松嶋はさらなる対抗策を施していく……。

 著者は本書の主役たる情報トージツ出身。出身者ならではのリアルな細部が読みどころ。(ダイヤモンド社 1600円+税)

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