「BAR物語」川畑弘著

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 開高健が通った赤坂のバー「木家下」のマスターがある日、開高から「いいバーの条件とは何ぞや?」と聞かれた。答えは「店がヒマなこと」。つまり客は見知ったマスターの顔を見て冗談を言ったり、愚痴を聞いてもらいたくてバーに来るのだと。本書には、そんな客の心をすくい取って至福の時間を与えてくれるバーテンダーの取っておきの話が収められている。

 95歳、バーテンダー歴70年というマスターがいた札幌の「バーやまざき」。80歳でいまだ見習バーテンダーという、亡き夫の後を継ぐ福島の老舗「木馬館」のお母さん。開店後3カ月で大震災に見舞われ、その1カ月後に再開した南相馬の「ウィザード」。開店55年、突然の病気で休店せざるを得なかったが、歴史ある店をなくすわけにはいかないという仲間の協力で無事、再開を果たした北新地の「樽」など。

 著者はバーテンダー向けのサントリーのPR誌「ウイスキーヴォイス」の編集長。巻末の本書に登場するバーのマップは旅人必携。(集英社インターナショナル 1200円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

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