「ファイト」佐藤賢一著

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 昨年6月に亡くなったモハメド・アリの記念碑的な4つの試合を、アリの一人称の視点から描いたボクシング小説。1戦目は1964年の対ソニー・リストン戦。当時無類の強さを誇っていたリストンに22歳のアリが挑む。圧倒的に不利な予想を覆し、7回TKO勝ち。2戦目は71年の対ジョー・フレージャー戦。イスラム教に改宗したアリはベトナム戦争への徴兵を拒否し、タイトルを剥奪される。その再起を懸けた一戦。15回判定負け。3戦目は74年の対ジョージ・フォアマン戦。「キンシャサの奇跡」として有名な世紀の一戦。全盛期を過ぎたと思われたアリが、ロープを背にしての巧みな試合運びで8回KO勝ち。最後は80年の対ラリー・ホームズ戦。引退後のカムバック戦。11回TKO負け。

 大のボクシング好きで若い頃ジムに通ったという著者だけに、試合の細部を丁寧に再現し、アリの心情も細かくすくい取っている。結果はわかっているのに読みながら思わず力が入ってしまうほどのリアルさに感服。(中央公論新社 1700円+税)


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