「桶狭間の四人光秀の逆転」鈴木輝一郎著
「金ケ崎の四人」「長篠の四人」など戦国4人シリーズの最新作。後に天下を取って歴史に名を残した武将たちが、まだ発展途上にあったころの物語だ。
信長27歳、秀吉24歳、家康19歳。みな若い。4人の中でただひとり、明智光秀だけが45歳。人生50年の時代、初老といってもいいが、いまだ「人生の夜明け」は訪れず、くすぶっている。仕官先もなく、妻の髪を売った金さえ賭場ですってしまう体たらく。同世代の武田信玄や今川義元は大活躍しているのに、自分だけなぜ? こんなはずではなかった。
美濃の土岐源氏の支流として将来を嘱望されていた光秀は上方留学して、そろばん術や鉄砲術、連歌や朝廷の典礼を学んでいた。ところが、留学中に斎藤道三の謀反によって主君が追放され不遇の日々が始まる。
残りの人生で「一発当てたい」と、焦る光秀の前に現れたのは、信長の間者を名乗る秀吉、幼少から苦労した家康、バカなのか天才なのか分からない信長。それぞれの思惑が複雑に絡み合いながら、4人は桶狭間の戦いに突き進んでいく。光秀の一発逆転なるか?
歴史を土台にしながらも、キャラの立った4人の掛け合いは、まさに戦国喜劇。文句なく楽しめる。
(毎日新聞出版 1600円+税)