「キラキラ共和国」小川糸著

公開日: 更新日:

 テレビドラマ化もされた小説「ツバキ文具店」の続編。厳しかった祖母の亡き後、鎌倉で文具店と代書業を引き継いだ鳩子の人生に大きな変化が訪れた。

 カフェの店主でシングルファーザーのミツローさんが、鳩子の人生のパートナーとして再登場。ミツローさんの娘QPちゃんが小学校に上がると同時に2人は入籍し、鳩子はいっぺんに妻となり、母になった。

 新しい3人家族の暮らしを軸に、代書を頼みにくるお客さんたちの人生模様が描かれる。目が見えない息子から母への感謝の手紙、夫のわび状、妻からの三くだり半……。鳩子は精いっぱいお客さんの思いをくんで、手紙をしたためる。

 家族3人の暮らしは、質素ながら丁寧で、優しい気づかいに満ちている。ヨモギ団子、イタリアンジェラート、むかごご飯、蕗味噌。目次にもなっている季節感のある食べ物が、物語の味を深めている。

 事件で命を落としたミツローさんの前妻のこと。幼い鳩子を捨てた母のこと。ミツローさんと鳩子は、お互いに言えなかったことも言えるようになった。それが家族。つらいこともあったけれど、鳩子の人生は星空のようにキラキラしていて、読者も鳩子と一緒に幸せな気分になる。

(幻冬舎 1400円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    福原愛が再婚&オメデタも世論は冷ややか…再燃する「W不倫疑惑」と略奪愛報道の“後始末”

  2. 2

    「年賀状じまい」宣言は失礼になる? SNS《正月早々、気分が悪い》の心理と伝え方の正解

  3. 3

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  4. 4

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  5. 5

    国民民主党・玉木代表「ミッション・コンプリート」発言が大炎上→陳謝のお粗末…「年収の壁」引き上げも減税額がショボすぎる!

  1. 6

    どこよりも早い2026年国内女子ゴルフ大予想 女王候補5人の前に立ちはだかるのはこの選手

  2. 7

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  3. 8

    「M-1グランプリ2025」超ダークホースの「たくろう」が初の決勝進出で圧勝したワケ

  4. 9

    「核兵器保有すべき」放言の高市首相側近は何者なのか? 官房長官は火消しに躍起も辞任は不可避

  5. 10

    楽天が変えたい「18番は田中将大」の印象…マエケンに積極譲渡で“背番号ロンダリング”図る