「キラキラ共和国」小川糸著
テレビドラマ化もされた小説「ツバキ文具店」の続編。厳しかった祖母の亡き後、鎌倉で文具店と代書業を引き継いだ鳩子の人生に大きな変化が訪れた。
カフェの店主でシングルファーザーのミツローさんが、鳩子の人生のパートナーとして再登場。ミツローさんの娘QPちゃんが小学校に上がると同時に2人は入籍し、鳩子はいっぺんに妻となり、母になった。
新しい3人家族の暮らしを軸に、代書を頼みにくるお客さんたちの人生模様が描かれる。目が見えない息子から母への感謝の手紙、夫のわび状、妻からの三くだり半……。鳩子は精いっぱいお客さんの思いをくんで、手紙をしたためる。
家族3人の暮らしは、質素ながら丁寧で、優しい気づかいに満ちている。ヨモギ団子、イタリアンジェラート、むかごご飯、蕗味噌。目次にもなっている季節感のある食べ物が、物語の味を深めている。
事件で命を落としたミツローさんの前妻のこと。幼い鳩子を捨てた母のこと。ミツローさんと鳩子は、お互いに言えなかったことも言えるようになった。それが家族。つらいこともあったけれど、鳩子の人生は星空のようにキラキラしていて、読者も鳩子と一緒に幸せな気分になる。
(幻冬舎 1400円+税)