「日本の無戸籍者」井戸まさえ著
自らも無戸籍児の親になってしまった著者が、1万人以上いるといわれる無戸籍問題の実態を伝えながら、戸籍制度について考察したテキスト。
無戸籍者が存在するのは、民法772条で、離婚後300日以内に出生した子は、前夫が父親と規定されるため、それを避けるために出生届を出さない・出せない状態となっているケースや、親が貧困などの事情で出生届を出さない場合などさまざま。
一方で、無戸籍者が戸籍を取得するためには必ず調停や裁判を経なければならず壁は高いという。無戸籍が原因でけがの治療や結婚をあきらめ、仕事もままならない青年や、戦争によって戸籍を失った人々などの例を紹介しながら、無戸籍者を生み出す社会構造をもたらしてしまった戸籍制度の不備を指摘する。
(岩波書店 840円+税)