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卵かけごはんの専門店を起点に集落活性化計画

「ヒカルの卵」森沢明夫著/徳間文庫 700円+税

 テレビのバラエティー番組で圧倒的に多いのが食べ物に関するもの。またレストランなどでも、スマホでインスタグラム用に目の前の料理を撮影している姿をよく見かける。食のテーマは安定した視聴率を稼げるし、アクセスされる率が高いからだろうが、食べ物にはなにがしかの物語がついて回るのも人気の秘密かも知れない。

 小説も同様。近年食べ物や料理をテーマにしたものが増えている。本書は、過疎の村で世界初の卵かけご飯専門店を立ち上げる物語で、地域おこし+こだわり食材をテーマにしたもの。

【あらすじ】
 父親から受け継いだ養鶏場を営む村田二郎が暮らす蛍原集落は周囲を深い山々に囲まれた過疎の村。鶏舎には常にクラシック音楽が流れ、餌は二郎が長年かけて編み出した特別配合飼料で、飲み水は湧き水を使用するというこだわりよう。

 そこで生まれる卵の味は絶品。35歳になった二郎は、自慢の卵を武器に卵かけご飯の専門店をつくることにした。ところが食事代はタダにするという。それを聞いた幼馴染みの大吉は猛反対。交通の便が悪いこの村にわざわざ卵かけご飯を食べに来る酔狂な客などいるはずがなく、おまけにタダで食わせるなんて無謀にも程があると。

 しかし、二郎には、この店を起点として寂れた集落を活性化するという遠大な計画があった。周囲が危ぶむ中、どんなに失敗しても「大丈夫、俺はツイているから」という根っからの楽天的な二郎は計画を進めていく。

【読みどころ】
予定調和的な筋立てではあるが、卵のほか、登場する料理の描写の巧みさや、成功物語とはいささか趣の違うエンディングによって、卵かけご飯という地味なテーマが、爽やかな人生賛歌に変容していくのはお見事。
<石>

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