かつて“敵”だった猫だからこそ、かわいい

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 昨今の猫ブームは日本だけのものではなく、アメリカでも猫は犬よりおよそ1200万匹も多く飼われているという。

 人間はなぜ猫に引かれてしまうのか。その謎を解き明かしているのが、全米でベストセラーとなったアビゲイル・タッカー著「猫はこうして地球を征服した」(西田美緒子訳 インターシフト 2200円+税)である。人間が猫の魅力に逆らえない理由を、スミソニアン博物館が発行するスミソニアン誌の記者である著者は、「まるで違っているのに、よく似てもいるため」としている。

 人間は本来、社会性が高くコミュニケーションを重視する生き物だ。しかし猫は、単独行動を旨とする群れない生き物の代表格であり、人間とは正反対の性質を持つ。また、もともと猫は超肉食動物であり、「殺すか、死ぬか」という激しい2択を生きてきた。私たち人類の祖先も、ネコ科の動物にはかなり食べられてきた歴史を持っている。家の中で寝てばかりいる猫でさえ、動くものに飛びかかるなど野生を色濃く残している。

 かつては敵だった猫を、人間はなぜ手元に置くことになったのか。その鍵を握るのが、「ベビーリリーサー」だという。これは、私たちに人間の赤ん坊を連想させ、ホルモン分泌の連鎖反応による幸福感を呼び起こす身体的特徴のこと。例えば、丸い顔やぽっちゃりした頬、大きな額に丸い目、小さな鼻などがある。さらに、猫の「にゃー」という鳴き声は、猫が長い期間をかけて、わざわざ人間の赤ん坊に似せて発声の調子を変えてきたという研究もあるという。そして猫の大きさは平均3・5キロと、人間の新生児と同じくらいだ。

 さまざまな動物の赤ちゃんにもベビーリリーサーはあり、ポメラニアンやパグなどの犬は人間の好みに合わせて生み出された犬種だ。ところが猫は大人になったものも含めて、原種であるリビアヤマネコでさえベビーリリーサーが色濃く残る。つまり猫は、かわいらしさが完璧に集まった特徴を持ちながらも、かつて私たちの祖先を大量に捕食していた動物そのままの見かけも維持していることになる。究極の捕食者と愛らしい赤ん坊の姿。その絶妙な組み合わせに、緊張感を伴う逃れられない魅力を感じるのだと本書。

 他にも、猫からうつり人間の脳を操る寄生生物トキソプラズマ、口のないハローキティが愛される理由など、あらゆる角度から猫を徹底分析する本書。猫好きならずとも必読だ。

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