魚の皮の焦げの匂いが香る

公開日: 更新日:

「クレヨンで描いたおいしい魚図鑑」加藤休ミ著

 記録的な不漁で今シーズンは、さんまの塩焼きを口にする機会が少なかったとお嘆きのあなたにお薦めしたい図鑑。

「魚図鑑」と銘打たれてはいるが、「おいしい」という言葉が添えられているように登場するのは、「生前」の姿ではなく、調理後の「魚」たちなのだ。では料理図鑑かと問われれば、それともちょっと異なる。

 というのも、例えば「秋刀魚」なら英名「Pacific saury」や、学名「Cololabis saira」もきちんと併記(小さくだけど)。その上で、堂々とページいっぱいの「さんまの塩焼き」の絵とともに、さんまの塩焼きは「秋の味覚王です。秋のほんの一瞬、わたしたちの食卓、食堂、イベント会場と場所を選ばず輝きを放つ、塩焼き界のレジェンドです」と解説されるなど、遊び心に満ちた構成で、ページをめくるのももどかしい。

 続く「金目鯛の煮付け」には「胸ビレあたりの身が好き。目の玉あたりのブヨブヨしたところもおいしいよ」のように、著者の個人的な意見(アドバイス?)もそれぞれの魚(料理)に添えられる。

 それにしても、クレヨンとクレパスで描かれた魚(料理)のなんともおいしそうなこと。皮の焦げや煮付けの照りなど、匂いまで香ってきそうな出来栄えに、ご飯が欲しくなる。

 その他、ししゃもの一夜干しやイカメシなどに並んで、「ツナ缶」(ビンナガマグロ)や、おでん種族として「練り物」(シイラ)や「はんぺん」(スケトウダラ)など、魚の形をとどめないものまで登場。さらに「かにぱん」など、もはや魚ではない、もちろんカニでもないものまで出てくる展開に思わずニヤニヤ。食卓でお馴染みの35種もの魚が登場。魚を食わず嫌いする子供たちと読むのに最適だ。(晶文社 1600円+税)

【連載】発掘おもしろ図鑑

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元横綱・三重ノ海剛司さんは邸宅で毎日のんびりの日々 今の時代の「弟子を育てる」難しさも語る

  2. 2

    巨人・岡本和真を直撃「メジャー挑戦組が“辞退”する中、侍J強化試合になぜ出場?」

  3. 3

    3年連続MVP大谷翔平は来季も打者に軸足…ドジャースが“投手大谷”を制限せざるを得ない複雑事情

  4. 4

    高市政権大ピンチ! 林芳正総務相の「政治とカネ」疑惑が拡大…ナゾの「ポスター維持管理費」が新たな火種に

  5. 5

    自民党・麻生副総裁が高市経済政策に「異論」で波紋…“財政省の守護神”が政権の時限爆弾になる恐れ

  1. 6

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 7

    沢口靖子vs天海祐希「アラ還女優」対決…米倉涼子“失脚”でテレ朝が選ぶのは? 

  3. 8

    矢沢永吉&甲斐よしひろ“70代レジェンド”に東京の夜が熱狂!鈴木京香もうっとりの裏で「残る不安」

  4. 9

    【独自】自維連立のキーマン 遠藤敬首相補佐官に企業からの違法な寄付疑惑浮上

  5. 10

    高市政権マッ青! 連立の“急所”維新「藤田ショック」は幕引き不能…橋下徹氏の“連続口撃”が追い打ち