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「あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠」キャシー・オニール著、久保尚子訳

 購買履歴から消費性向を読み取り、雑踏から被疑者を見つけ出すに至ったAI。その脅威の全貌。

 優秀な数学者としてコロンビア大教授にまで上り詰めながらも、高給にひかれて大手ヘッジファンドのクオンツ(金融工学アナリスト)に転職。ところがそこでリーマン・ショックに遭遇。著者はそこで愛する数学が引き起こした災いに深刻に悩んだという。

 しかし、その後も世界は止まらず、格差の拡大も非人間的な管理もむしろ進んでいる。ビッグデータ経済の基盤となる数理モデルの問題は専門家以外に意味がわからず、アルゴリズム(計算式)で合否が決まる基準の妥当性も判定できない。現にアメリカでは評判のいい公立学校教諭がアルゴリズム判定で不可が出てクビになったりしているのだ。

 著者はこの状態を「数学的破壊兵器」のようだという。犯罪の再犯可能性を裁判に活用しようとする数理モデルも、実は貧困層の黒人など本人の責任外で警察に職質された経験までカウントされるため「テクノロジーは偏見を除去できない」のだ。

(インターシフト 1850円+税)

「おそろしい ビッグデータ」山本龍彦著

 政財界あげての「ビッグデータ推し」の中であえて「おそろしい」という著者は慶大法科大学院教授だ。たとえばと挙げた例。学生時代に就活で失敗したFさん。ファストフード店でバイトをしながら就活に再挑戦したが、ビッグデータ解析で求職者の職務遂行能力を予測するアルゴリズムを開発したE社のプログラムで低能力と予測されて就活に失敗。その後は負のスパイラルのように、起業を試みても融資を申し込んだ銀行でAI予測されて不可。次第に自分が社会的劣等者と思うに至るが、同じような立場の人間とSNSで交流すると、かえってその履歴がマイナスになるとして孤立。やがてスマホの生活記録アプリのデータから「うつ病」と診断された……。

 あくまで「予測シナリオ」だが、こんな無残な可能性さえあると警告する。

(朝日新聞出版 720円+税)

「『AIで仕事がなくなる』論のウソ」海老原嗣生著

「近い将来、9割の仕事は機械に置き換えられる」という英オックスフォード大の学者の予測は世界に衝撃を与えた。リクルートグループを経て人材マネジメント会社を起業した著者はこれに疑問を呈する。

 AIのディープラーニング(深層学習)の仕組みをたどり、いつ、どのようにいろんな仕事がAIに置き換わっていくかを専門家にもインタビュー。一見荒っぽい題名のようだが、中身は丁寧な論じ方だ。

 著者はこれから15年後以降、AI化による雇用喪失は一気に進むとみる。ところが人口減少の日本では雇用喪失の影響が小幅にとどまるという。ヒョウタンからコマのようなユニークな楽観論。

(イースト・プレス 1300円+税)

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