「名医が考えた 認知症にならない最強の食事術」江部康二著

公開日: 更新日:

 認知症の中でもっとも多いのが、脳の中にアミロイドβと呼ばれる老廃物がたまり、神経細胞にダメージを与えるアルツハイマー型。認知症患者のうちの70%も占めるが、逆に考えればアルツハイマー型に気を付けていれば、認知症への不安を大幅に軽減することにもつながりそうだ。

 45年以上の臨床経験を持つ医師である著者は、食事で取る糖質を制限することがアルツハイマー型のリスクと闘う有効な手段であると説いている。食事や間食で糖質を摂取すると膵臓でインスリンというホルモンが分泌されるが、糖質を過剰摂取すると通常の10~30倍ものインスリンが追加分泌されてしまう。

 実は、このインスリンの追加分泌は脳にアミロイドβが蓄積される要因にもなるという。さらに、脳の海馬という器官からもインスリンが分泌されて記憶物質として働くのだが、糖質の過剰摂取で追加分泌が起こるとインスリンが正常に働かない「インスリン抵抗性」を招き、海馬に記憶を定着させる働きが妨げられてしまうことも分かっているのだ。

 糖尿病患者がアルツハイマー型にかかる割合は、糖尿病でない人と比べて何と3倍以上と著者は言う。糖尿病に有効な糖質を制限する食事法を身につけることは、認知症予防にも大きな役割を果たすというわけだ。

 本書では、カロリー制限はせず糖質を制限するためのさまざまな工夫を紹介。糖質制限の理想郷は焼き鳥や、会席料理よりフレンチのコースを、主食類とスイーツを避ければ多種類を好きなだけ食べられるバイキングがおすすめなど、外食時でも役立つ糖質制限のコツが満載だ。

 認知症を予防して健康長寿を目指したいなら、糖質に警戒しよう。

(宝島社 1000円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ビートたけし「俺なんか悪いことばっかりしたけど…」 松本人志&中居正広に語っていた自身の“引き際”

  2. 2

    「二刀流」大谷翔平と「記録」にこだわったイチロー…天才2人の決定的な差異

  3. 3

    元フジテレビ長谷川豊アナが“おすぎ上納”告白で実名…佐々木恭子アナは災難か自業自得か

  4. 4

    橋本環奈『おむすび』はNHK朝ドラ視聴率ワーストほぼ確定…“パワハラ疑惑報道”が致命傷に

  5. 5

    中居正広氏は37年で築いた資産喪失の瀬戸際…不動産複数所有で倹約家も「違約金+α」の脅威

  1. 6

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 7

    日本代表FW古橋亨梧の新天地は仏1部レンヌに!それでも森保ジャパン復帰が絶望的なワケ

  3. 8

    “かつての名門”武蔵の長期低落の深刻度…学習塾「鉄緑会」の指定校から外れたことも逆風に

  4. 9

    石丸伸二陣営に都知事選での公選法違反疑惑…矢面に立たされた渦中の「T氏」の正体と釈明

  5. 10

    橋本環奈「おむすび」浮上の足を引っ張るギャル衣装のダサさ…「カムカム」「ばけばけ」も逆風に