「じんかん」今村翔吾著

公開日: 更新日:

 狩野又九郎は松永久秀の謀反を信長に報じねばならないことで苛立っていた。これが初めてではない。だが、前回は皆の予想に反して許された。今回も信長は鎮圧には嫡男の信忠を行かせると言いながら「降伏すれば赦(ゆる)すとも伝えよ」と続けた。久秀は信長に許されることを知っていた。

 久秀の信長への2通の書状のひとつは謀反の宣言書だったが、2通目は信長が降伏を許した場合の条件を問うものだった。書状には「即刻、37人の家族を救って頂きたい」とある。信長が「名は何と記してある」と尋ねた。「九兵衛……」と答えると、信長の口元が綻んだ。

 主を殺し、将軍を暗殺した悪人として知られる松永久秀の人生を描く長編時代小説。

(講談社 1900円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がソフトB自由契約・有原航平に「3年20億円規模」の破格条件を準備 満を持しての交渉乗り出しへ

  2. 2

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  3. 3

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  4. 4

    日吉マムシダニに轟いた錦織圭への歓声とタメ息…日本テニス協会はこれを新たな出発点にしてほしい

  5. 5

    巨人正捕手は岸田を筆頭に、甲斐と山瀬が争う構図…ほぼ“出番消失”小林誠司&大城卓三の末路

  1. 6

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  2. 7

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    「ばけばけ」苦戦は佐藤浩市の息子で3世俳優・寛一郎のパンチ力不足が一因