SDGs(エス・ディー・ジーズ)

公開日: 更新日:

「SDGs」蟹江憲史著

「持続可能な開発目標」を意味するSDGs。いま、ポストコロナの指針としても大きな意義を発揮している。



 予想外のコロナショックに見舞われた現代。リーマン・ショックも打撃だったが、世界中が巻き込まれていまだ先行き不透明なコロナ禍こそ、21世紀の不吉な暗示のようだ。その中で改めて注目されるSDGs。「持続可能」な「開発」と「エコ」が一致する地点こそ「ウィズコロナ」のあるべき姿といえるだろう。

 SDGsはエコ意識を起点にし、気候変動を念頭に温室効果ガスを出さない再生可能エネルギーを「経済」につなげようとする。CO2対策というだけなら原発が手っ取り早いが、それが対案にならないのは既に周知の通り。ではどうするか。そこを新たな開発の好機ととらえる視点がSDGsの精神だろう。

 さらに自然災害にせよ感染症の拡大にせよ、最も大きな打撃を受けるのが社会的弱者。この格差の解消のために、どこにどう資源を振り分けるか。「女性活躍」を単に女性の労働力資源の搾取にすり替えてしまったアベ政権のやり方はSDGsの精神に反するものだろう。逆にグッチなどの高級ブランドがSDGsを意識したビジネスを始めたことなどは時代の潮流の変化を告げている。

 著者は内閣府のSDGs関連委員なども務める政策学者。

(中央公論新社 920円+税)

「地図とデータで見るSDGsの世界ハンドブック」イヴェット・ヴェレほか著

 SDGsの特徴は「貧困をなくす」や「飢餓をゼロに」から「平和と公正、効果的な制度」や「目標達成のためのパートナーシップ」まで17にも上る開発目標。覚えるだけでも大変で、まるで試験勉強のような気分にもなる。

 そこで登場した本書はフランスの専門家たちによるSDGsの手引書。「自然保護」(=環境)と「開発」(=経済)を両立させる考え方はもとはアメリカで生まれたが、現在ではヨーロッパが中心。世界中に植民地を持った西欧各国は、歴史的な責任を負う立場でもあるのだ。「持続可能な開発」が世界中でどう展開されているのか、本書は各地の地図やグラフを満載してわかりやすく伝える。

「難民」というと紛争や迫害が原因とばかり思われるが、実は自然災害や気候変動のために土地を捨てざるを得ない「気候難民」や「エコ難民」もいる。

 たとえば温暖化による海面上昇で太平洋諸島(フィジー、ツバル、トンガ、キリバスなど)からは、2050年までに10万人から200万人ともいわれる強制的な気候難民が出るだろうといわれる。

(原書房 2800円+税)

「SDGs見るだけノート」笹谷秀光監修

 環境省の官僚からコンサルタントに転じ、千葉商科大でも教壇に立つ。そんな監修者の履歴が示すように、本書はSDGsをいかにビジネスにつなげるか、その手引きになることを狙ったグラフィックな入門書。

 企業はSDGsに取り組むことで社会的な信用度を上げ、ESG投資など、資金調達でも有利になる。

 リーマン・ショックへの反省から、投資は単に荒稼ぎをするのではなく、長期的な人類社会の生存と繁栄を視野に入れなければ安定したものにならない。

 その考えから生まれたのがESG投資だ。幅広くSDGsの全体像をつかむための本書は入門編。

(宝島社 1100円+税)

【連載】本で読み解くNEWSの深層

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元横綱・三重ノ海剛司さんは邸宅で毎日のんびりの日々 今の時代の「弟子を育てる」難しさも語る

  2. 2

    巨人・岡本和真を直撃「メジャー挑戦組が“辞退”する中、侍J強化試合になぜ出場?」

  3. 3

    3年連続MVP大谷翔平は来季も打者に軸足…ドジャースが“投手大谷”を制限せざるを得ない複雑事情

  4. 4

    高市政権大ピンチ! 林芳正総務相の「政治とカネ」疑惑が拡大…ナゾの「ポスター維持管理費」が新たな火種に

  5. 5

    自民党・麻生副総裁が高市経済政策に「異論」で波紋…“財政省の守護神”が政権の時限爆弾になる恐れ

  1. 6

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 7

    沢口靖子vs天海祐希「アラ還女優」対決…米倉涼子“失脚”でテレ朝が選ぶのは? 

  3. 8

    矢沢永吉&甲斐よしひろ“70代レジェンド”に東京の夜が熱狂!鈴木京香もうっとりの裏で「残る不安」

  4. 9

    【独自】自維連立のキーマン 遠藤敬首相補佐官に企業からの違法な寄付疑惑浮上

  5. 10

    高市政権マッ青! 連立の“急所”維新「藤田ショック」は幕引き不能…橋下徹氏の“連続口撃”が追い打ち