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「したたか 総理大臣・菅義偉の野望と人生」松田賢弥著

 あっという間に実現してしまった「菅首相誕生」。政策討論もないまま、密室で一体なにが起きたのか。



 いまごろになって安倍前首相は「菅氏はずいぶん前から後継候補だった」なんて日経新聞のインタビューで語っている。これでは「後継」といわれた岸田前政調会長には「水に落ちた犬をたたく」ような仕打ちだろう。しかし政治畑のベテランルポライターとして「週刊現代」ほかで活躍する著者は、4年前の初版を出した本書の新版冒頭で「騙すほうも悪いが、騙されるほうはもっと悪い」という。要するに岸田も石破も菅の野望を見抜けなかったというわけだ。

 安倍政権の官房長官としての在任2822日は歴代最長。以前の記録は森、小泉両内閣のときの福田康夫長官の1289日だから2倍以上だ。その間、気配を一切殺したのだから、これはもう「したたか」としか言いようがない。

 本書はそんなしたたか新総理の生い立ちから政治家人生までたどり、折々に直接インタビューも引用。安倍政権を支える立場ながらも実は改憲問題などには関心が薄かったらしいことをほのめかす。なお学歴は誤情報が出回って“苦労人伝説”をいろどっているが、本書で本人がはっきり法政大の「昼」と答えている。

(講談社 840円+税)

「ふたりの怪物 二階俊博と菅義偉」大下英治著

 突如として誕生した感のある菅政権だが、実は昨年7月の時点で本書は「ポスト安倍は菅総理」と断言していた。よく読むと、既に2017年夏の時点で官房長官をかこむ無派閥議員の会(向日葵会)が発足するなど、「菅総理」への布石が打たれ始めていたことがわかる。その中心は妻の案里とともに公選法違反で逮捕、起訴された河井克行元法相。故・鳩山邦夫の残した「きさらぎ会」を事実上の“菅チルドレン”の集まりに変えた人物だ。

 対する二階も政党再編期に自民党を離党しながら、復党後すぐに重要課題をまかされるなど辣腕を発揮。総務会長時代には、やはり離党組の野中広務や綿貫民輔を復党させるという離れ業も演じた。「政界の闇」の内部をうかがわせるベテランライターの一冊。

(エムディエヌコーポレーション 1600円+税)

「官房長官と幹事長」橋本五郎著

 読売新聞のベテラン政治記者としてテレビでもおなじみの著者が解説するのは官房長官と幹事長の制度や実態、種々のエピソード。官房長官は本来「他省庁がまとまらないときの調整役」という地味な立場。それだけに誰がなるかで全く変わるという。

 著者が最強とみるのが中曽根内閣時の後藤田正晴。それを上回る「最強」が菅だという。

 一方、幹事長は「ライバル型」「総理への階段型」「独立独歩型」の3つに分けられる。三木内閣の中曽根幹事長以来、幹事長には総裁派閥ではなく党内のナンバー2や実力者が就くのが慣例になった。福田内閣時の大平幹事長などはその典型。これが「ライバル型」だ。「総理への階段型」は小泉内閣の安倍幹事長。では二階は?

 これぞ「独立独歩型」。宮沢内閣の梶山静六、中曽根内閣の金丸信ら。こぼれ話の合間の一言に著者の好き嫌い(たとえば小沢一郎嫌い)が垣間見える。

(青春出版社 920円+税)

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